身体は内側から涼しくしよう
食べ物で乗り切る「節電食」とは?
2010年の記録的猛暑ほどではないとはいえ、今年も残暑は厳しくなりそうだ。
節電しながら涼しく過ごす方法として、打ち水やグリーンカーテンなど生活面での工夫は多いが、体の内側からクールダウンできる節電術として注目したいのが「節電食」である。
女性たちの間でブームになって久しい「薬膳」も節電食のひとつだ。
夏が旬の野菜にはクールダウンの効果あり!
薬膳料理に学ぶ、夏バテ予防の食事法
食の重要性は「医食同源」という言葉にもあるように、薬膳は熱中症や夏バテ予防にも欠かせない健康法である。
中国医学で食養、食療と呼ばれ、紀元前10世紀頃に皇帝の食事を管理する食医から薬膳が始まったとされている。
薬膳では、「陰陽」「五行」という2つの考えが骨子となり、「天と地」「太陽と月」「男と女」というように、万物はすべて対立する二面性(陰と陽)を持ち、陰性の食材は体を冷やし、陽性の食材には体を温める働きがあるとされている。
こうした食材の持つ性質を利用した食事(薬膳)をすることで、身体のバランスを整えていくというものだ。
その一例が旬の野菜だ。ネギや山芋、里芋など冬が旬の野菜には体を温める働きがあり、キュウリやナス、トマトなど夏が旬の野菜には体の熱を冷ます働きがある。
こうした夏が旬の野菜には体の熱を冷ますだけでなく、消耗した水分やエネルギー(気)を補ってくれるものが多い。
ただし、体を冷やす働きが強いため冷え性の人は食べ過ぎに注意が必要である。
生姜やニンニク、ネギなどの温める食材をプラスして、上手に夏野菜を摂るようにしよう。
また、薬膳では旬の野菜に加え、豆腐や梅、豚肉など夏バテ予防に有効な食材があるので積極的に日々の食生活に取り入れたいところだ。
辛味成分の香辛料は汗をかくことで涼しくなる!
暑い国に学ぶ、熱を逃す食材を使った料理法
節電食は薬膳だけではない。クールダウン+夏バテ予防としてお勧めできるのが辛味成分の香辛料である。
暑い国・インドの料理には香辛料が多く使われているが、インドの家庭料理はその日の気候や体調に合わせて香辛料の種類や分量を決めるという。
香辛料には発汗作用があり、汗は放熱手段のひとつで体温調整の役割をしている。汗となって皮膚から水分が蒸発する際、気化熱を奪って体から熱を取り除いてくれるのだ。
夏バテは、こうした大切な役割を持つ汗の機能が上手く働けないことからも起こる。香辛料の効いた料理を食べて汗をかき体温を下げるのは、まさにインド人の知恵である。
香辛料を使った料理はインドだけでなく世界各地にある。約350種類ある香辛料の中で、辛みのあるものは約20種類。
コショウやマスタード、唐辛子などは日本人にも馴染の香辛料だ。ダイエット食材としても注目を集めている生姜も香辛料のひとつである。
インドが原産のシナモンも発汗作用のある香辛料で、コーヒーに入れたりトーストにかけたりしても美味。
こうした辛味のある香辛料は、胃液の分泌を促し食欲を増進させてくれるので夏バテ予防にも有効だ。
「お昼はそうめんやざるそばであっさりと」という場合も、生姜やワサビ、七味唐辛子などの香辛料を加えたり、ネギや大根おろし、シソなどの薬味を添えたりすることで栄養面も補える。
ミントの香りを嗅ぐだけで体感温度が4℃も下がる!
クールダウン効果のあるおやつや水分補給法
クールダウン効果のある節電食は食事だけでなく、おやつや水分補給にも応用できる。
すでにテレビや雑誌でも注目を集めているが、日本アロマ環境協会によれば、ミントにはクールダウン効果があるという。
同協会のHPでは、香りを嗅がない状態で水温28℃の水に手を入れて感じる体感温度と、ペパーミントの香りを嗅いだ状態で水温32℃の水に手を入れて感じる体感温度が同レベルである(※)ことが取り上げられている。
実験結果によれば、ミントの香りをかぐことで体感温度が4℃も下がったというのだ。
暑い夏を涼しくする節電おやつとして、今夏は定番の「FRISK」(クラシエフーズ)がペパーミントとスペアミントの配合をチェンジし冷涼感がアップしているほか、「ポッキー」(江崎グリコ)や「きのこの山」(明治)など、子どもから大人まで人気の定番のお菓子にもミント味が登場している。
ミントの効果をより高めるには習慣化するのがポイントだ。
ビジネスシーンでは、休憩時間だけでなく、会議の前やちょっとした仕事の合間にミントの冷涼感を利用してクールダウンすれば、弱冷房のオフィスでも快適に仕事ができる。
一方、水分補給に関しては手軽なだけに注意が必要だ。冷たい飲み物ばかりでは胃がやられたり、大量の汗をかいた後に水をガブ飲みしたりすれば低ナトリウム血症にもなりかねない。
塩分が含まれたスポーツドリンクも有効だが、熱々の緑茶やハッカ油を1滴垂らした紅茶で汗をかいてクールダウンするのも一考だ。
言うまでもなく、こうした節電食が身体に良いからといって同じ品ばかり偏って摂取し過ぎるのは禁物である。その点、ミント効果ならば食べるだけでなく、アロマの香りとしてオフィスや家でも取り入れられる。
大切なのは自分のライフスタイルや体質に合わせることだ。生活の工夫+食の工夫で、厳しい残暑も無理なく乗り切りろう!
※出典:「香りが感覚/使用感触の判断に及ぼす効果」(株)資生堂製品開発センター香料開発室 庄司 健(発表当時)フレグランスジャーナル社 AROMA RESEARCH No.23(2005
<DIAMOND Online 食の研究所 記事より>