ベンツ260D、車と燃料の歴史
世界で初めて市販されたディーゼル乗用車、1936年型メルセデス・ベンツ260D。1893年にルドルフ・ディーゼルが発表したディーゼルエンジンは、圧縮熱によって燃料を自然着火させる。
電気火花で点火するガソリンエンジンよりも高効率で、約30%の燃費向上を実現できるという。1933年、フランスのシトロエンは世界初の試みとして乗用車「ロザリー」にディーゼルを換装。2年後にはプロトタイプ100台が個人ドライバーに提供されているが、当時の法規制で発売には至らなかった。
260Dが発表されたのは、1936年2月のベルリンモーターショー。燃費は約11km/Lで、ガソリンモデルの約7.7km/Lを上回っていた。
ディーゼルエンジンは現在、トラックやバスなどの商用車用として世界中に普及している。クリーンなエンジンとして人気が高いヨーロッパでは、乗用車の半数をディーゼルが占める。
調査会社LMCオートモーティブによると、アメリカでのディーゼルのシェアは2.4%にすぎないという。燃料の軽油には硫黄などの有毒汚染物質が含まれているが、大気汚染規制に対応するため低硫黄化が進んだ。今後は燃費の良いエンジンとして普及が進むと予測されている。
Photograph courtesy Daimler
<ナショナルジオグラフィック 記事より>