アリ塚と空調、自然に学ぶエネルギー



音史のブログ-アリ塚



 シロアリのアリ塚(写真上)は、いわば小さな都市である。地下にまでトンネルが縦横に張り巡らされ、数十万匹が暮らす。さらに、内部の温度をほぼ一定に保つ仕組みが備わっているという。アフリカ南部のジンバブエでは1996年、シロアリの知恵を空調に応用したビルが建設された。


 首都ハラレにある複合商業施設、イーストゲートセンター(Eastgate Centre、写真下)は、同国の郊外で見られるアリ塚の構造を取り入れているという。

 イーストゲートセンターは「パッシブクーリング(受動的冷房)」システムを完備した初の建築物。冷却装置のコストは従来の10%で済み、エネルギー消費もハラレ市内の同規模の施設と比べて35%も少ない。日中に建物の壁で熱を吸収し、夜間にファンを使用して内部へ送り込む仕組みだ。

 しかし同施設の設計から20年の間に、アリ塚の機能についてさらに多くの発見があったという。アメリカ、ニューヨーク州シラキュースにあるニューヨーク州立大学環境科学森林学カレッジ(College of Environmental Science and Forestry)の生物学教授スコット・ターナー(Scott Turner)氏は次のように話す。

「イーストゲートセンターの建設に採用されたアリ塚の構造は、約50年にわたり標準的なモデルと考えられてきた。しかし、実はほとんど間違っていたのだ」。ターナー氏は施設が「非常に効果的」と認めているが、アリ塚内の空気の移動は一方向ではなく、肺の吸入と吐出のサイクルに近い。正しい構造の理解を深めれば、「風を取り込んで温度調節を行う今までにない画期的な手法の確立」につながるという。コンクリートの壁に小さな通気孔を設置して風を取り込み、そのエネルギーを既存の換気システムで利用する方法を同氏は考えている。

Photograph by Monica Rua, Alamy (above); Photograph by Ken Wilson-Max, Alamy (below)




<ナショナルジオグラフィック 記事より>