UAEで発見、最古のゾウ足跡
古代ゾウ「ステゴテトラベロドン(Stegotetrabelodon)」の想像図。1頭のオスが群れから離れていく。700万年前の足跡化石の調査結果に基づいて作成された。ステゴテトラベロドンは原始的なゾウで、体格は現生のアフリカゾウに近い。ただしオスの牙は左右に2本ずつあった。
化石の出土状況から判断して、歩行跡が発見されたアラブ首長国連邦(UAE)などアラビア半島全域に分布していたようだ。
「まだステゴテトラベロドンの足跡とは断定できない。ただ、700万年前の中新世当時、分布域をアフリカから広げた状況を考えれば、最も妥当な線だろう」とアメリカ、カリフォルニア州ポモナにある健康科学ウェスタン大学の解剖学者で研究共著者のブライアン・クラーツ氏は述べる。
同氏によると、この歩行跡は以前に仮報告書が発表されているという。今回の調査ではカメラを搭載した凧を飛ばし、初めて上空から撮影。画像をつなぎ合わせてみたところ、世界最大級の足跡化石群が現れた。
クラーツ氏は、初めて結果を目の当たりにした夜を忘れられないと言う。「すぐにゾウの群れの歩行跡だとわかった。俯瞰で見れば一目瞭然だったね」とその衝撃を話している。
最新の研究成果は、「Biology Letters」誌オンライン版に2月22日付けで掲載された。
アラブ首長国連邦(UAE)で発見された古代ゾウ「ステゴテトラベロドン(Stegotetrabelodon)」の足跡化石。凧に取り付けたカメラで撮影した写真を複数つなぎ合わせている。アメリカにある健康科学ウェスタン大学の解剖学者ブライアン・クラーツ氏は、「当時の行動が手に取るようにわかる」と語る。
例えば、いろいろなサイズの個体がいれば歩幅も異なるだろう。
クラーツ氏らの研究論文によれば、左右に横切る多数の足跡はさまざまな年齢で構成される13頭の群れだという。左下から右上へ斜めに伸びる足跡は大型のオス1頭の可能性が高い。つまり、ステゴテトラベロドンの群れはメスと子どもで構成され、オスは単独行動していたことになる。
この仮説は現代のゾウの社会構造と一致する。現生ゾウは大人のメスが群れを率い、性的に成熟したオスは単独で生活しながら、交尾のときだけ群れに合流するからだ。
<ナショナルジオグラフィック 記事より>