全国民必読 必ず来るM8M9大地震
その瞬間、あなたがとるべき行動を教えます(後篇)


■満員電車に乗っていたら

 日頃から「殺人的」と形容される首都圏のラッシュアワー。JR山手線で現在、もっとも一般的な車両は定員約160人だが、通勤通学時には乗車率が200%を超え、1車両の乗客数は300人超となる。

 社会心理学者の碓井真史教授(新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科)は過密状態の危険性を指摘する。

「災害時でも人間はそう簡単にパニックは起こさないのですが、2つの要因があれば可能性が高まります。『このままでは死ぬ』と強く思うことと、『目の前に逃げ道がある』ことです。

 満員電車で大地震に遭うと携帯も出せず、状況がわからない。不安の中、火が見えたり、近くで建物の崩壊が起こったとき、誰かが非常用ハンドルで車両の扉を開けてしまうと、乗客が殺到して将棋倒しになり、死者が出る可能性もあります」


線路に出ると感電死する

 満員電車ではドアに近いところには立たないほうがいいだろう。しかし、車内の人々がそれほどの命の危険を感じる局面はあるのか。

「たとえば山手線なら、電車の頭上に通っている多数の古い橋が怖い。これが崩落して車両の上に落ちてきたら、どうにもなりません」(前出・和田氏)

 こんなとき、パニックを起こさないためには「コントロール感」を保つことが大切だと碓井氏は言う。

「普段、電車のホームに着いた際、次の電車の到着が2分後でも10分後でも待つしかないのに発着時刻を確認していませんか。それがコントロール感で、次に起こることが予測できたり、何をすればいいか具体的にわかると人は安心する。大地震の際は車内の人同士で『換気のために、窓を開けてください』など具体的に呼びかけ合うと、みな冷静さを取り戻せます」


■地下鉄に乗っていたら

 地下では地震の揺れが地上より弱くなるので地下鉄は比較的安全だという話を聞いた人も多いだろう。

 だが前出の渡辺氏はそうとは言い切れないと指摘する。

「たしかに、最深部で地下49mを走る都営大江戸線のような深い空間はほとんど揺れません。一方、銀座線(最深部・地下16m)や丸ノ内線(最深部・地下17m)のような古い路線は浅いところを走っている。駅やトンネルが受ける衝撃は地表とあまり変わらない上に、銀座線の上野-浅草間などは'27(昭和2)年の開業だし、全区間が開業したのだって'39(昭和14)年で70年も経つ。耐用年数はとうに過ぎています」


 駅やトンネルが崩落すれば打つ手はないが、走行中の地下鉄で被災し、車両が止まったら、慌てて線路に出ようとしないことだ。銀座線や丸ノ内線などでは線路近くに高圧電流が流れており、感電死の恐れがある。

 万が一、通電が止まって運転士の誘導も期待できない状況になったら線路に降りるしかないが、地下鉄トンネルの側壁には最寄り駅の方向と距離を書いた標示があるので参考になる。

 これ以外にも首都圏では、地下に潜む思わぬ危険がある。渡辺氏が続ける。

「たとえば、再開発で駅前に地下広場ができた有楽町からは東京駅、大手町まで地下道が通じている。新宿、渋谷、池袋などでも網の目のように広がっています。

 消防法上、『地下道』は商店が入ることを前提に作られる『地下街』と異なり、スプリンクラーや排煙設備の設置義務がない。しかし実際には食べ物を温めて出す売店があり、ビルの地下飲食店街にもつながっている。火が出たり、防炎シャッターが機能せずビルの煙が回ったりしたらお手上げです。

 震災時に地下にいたら、まず地上に出ることを考えるべきです。私自身は、なるべく地下鉄には乗らないし、地下道も通りません」

 ちなみに、サラリーマンの憩いの場である有楽町や新橋のガード下の赤提灯も鉄道施設に組み込まれているが、安全性はどうか。

「ガードを基礎から補強するとなると運行を止めなければならず、結局、昭和初期のままのようなところが多い。構造が古くて火気もある、危険極まりない場所ですよ。せめて入る前に避難経路を考えておいてください」(前出・渡辺氏)


■東京ドームにいたら

 万単位の人が集まる場所といえば、東京ドームもそうだ。野球観戦やライブ観賞中に大地震に見舞われたらどうなるのか。

 東京ドームの天井部分はエアドームといい、ポンプで内圧を高くすることで風船のように膨らんでいる。

「観客席なども震度7に耐えるよう設計されていますし、電力の供給が止まっても非常用の自家発電で電源を維持できます。電気が止まると、エアドームが落ちると心配される方もいますが、非常に緩やかに沈んできます。もし落ちきっても観客席とは一定の距離が保たれるように設計してあるので、危険はありません。大地震の場合、お客さまにはむしろ、ドーム内にとどまっていただきます」(東京ドーム広報IR室)


■スーパーの屋上・立体駐車場にいたら

 遊興施設やスーパー、デパートにつきものなのが、立体駐車場や屋上駐車場だ。

 3・11の震災では、町田市のスーパー・コストコ多摩境倉庫店で立体駐車場につづくスロープが崩落、2人が死亡した。その実態を立体駐車場メーカーの業界団体である日本プレハブ駐車場工業会に問い合わせた。


「我々の扱う駐車場は、建物全体を一体で構造計算し、丸ごと供給するものです。国土交通大臣に防災・構造強度の認定を受けており、3・11でもまったく被害を出していません」

 町田市建築指導課によると、問題の駐車場はプレハブの認定駐車場ではなく、建設会社が店舗の上に直接作ったもの。施工に問題があった可能性が高いが、同じような駐車場は他にも多数、存在しており、素人には見分けがつかない。

 私たちにできることは、なるべく平場の駐車場か、商業施設から独立した新しい鉄骨の立体駐車場がある店などを選ぶことだ。


■富士山登山をしていたら

 登山中に地震が起きたらどうするのか。

 山頂にある山小屋「頂上富士館」に話をきいた。

「山では下界より地震の揺れが小さくなるが、展望台などは崩れるかもしれない。中腹にいたら落石に注意。まずは山小屋に入ることです。うちは売り物も提供すれば100人が1週間は過ごせるけど、救助にはそれほど期待できない。山がダメなときは下界はもっと混乱しているはずで、山小屋同士が連携してみんなをおろすことになるでしょう」

 首都圏大地震の際に連動して起こる可能性があるのが富士山噴火だが、

「噴火は突然は起きないから、あらかじめ避難します。もし山にいるとき噴火したら? 山頂より、中腹から爆発する可能性が高いみたいだから、上からなら火山灰や火砕流の流れる方向が分かる。それを見ながら状況に応じて下山ルートを探すことになるでしょう」。

 この他の状況を含めて、大地震時の注意点を上の表にまとめた。首都圏大地震は刻一刻と近づいている。その瞬間、ここに記した「知識」と「備え」が、あなたやあなたの家族の明暗を分けるかもしれない。



音史のブログ-注意1



音史のブログ-注意2


注1:揺れの周期が数秒~数十秒と長く、高層建築物と共振しやすい地震動。震源が遠い場合に影響が顕著になる。
注2:ビルなどの弱い階が潰れる現象。これが連続すると米国の9・11テロのように建物が丸ごと潰れてしまう。
注3:専門用語では「やや短周期地震動」。周期1~2秒の揺れで、木造家屋や中低層建築物をもっとも揺らす。





<現代ビジネス 記事より>