ストーンヘンジの原型? 英北部の遺跡



イギリス北部の島で発掘された石器時代の儀式用建造物群は、ストーンヘンジより古い可能性が浮上した。


音史のブログ-ストーンヘンジの原型
スコットランドのネス・オブ・ブロッガー遺跡。現時点で1割前後の発掘に留まる。

Photograph courtesy Hugo Whymark, ORCA


 この海辺の遺跡はネス・オブ・ブロッガー(「ブロッガー岬」の意)。スコットランドのオークニー諸島で最大のメインランド島にあり、2002年に発見された。

 最近になり放射性炭素年代測定で木の燃えかすを調べたところ、この岬に人の手が入ったのは紀元前3200年ごろと判明。巨大な壁に囲まれた空間に100近い建造物が築かれていったことがわかった。

 一方、イギリス南部のソールズベリー平原にあるストーンヘンジでは、初期の土塁は紀元前3000年ごろに現れた。あの有名な石が置かれ始めたのは、さらに約500年後のことだ。

 また、ネス・オブ・ブロッガーで行われた儀式的な集まりは、ストーンヘンジやエーブベリーといった同様の遺跡で催された宴の原型だった可能性もある。

 発掘調査を率いるオークニー考古学研究センター(Orkney Research Centre for Archaeology)のニック・カード氏は、「新石器時代の宗教の発展を理解する上で、オークニー諸島は特に重要な場所だ」と話す。

◆盛大な最後の宴

 オークニー諸島が石器時代の文化の源だとする説は以前から提唱されていた。例えば、新石器時代のイギリスで典型的な溝のある土器は、オークニー諸島から南に広がったと考えられている。カード氏によれば、土器の様式だけでなく、低い土塁の“壁”に囲まれた儀式の場であるストーンサークルやストーンヘンジの文化も同時に伝わったという。

 このような影響力を持っていたにも関わらず、ネス・オブ・ブロッガーが永遠に続くことはなかった。

 精巧に作られた神殿の周囲では動物の骨が大量に発掘されている。骨の年代を調べた結果、紀元前2300年ごろに盛大な宴が催されたことがわかった。カード氏によれば、その後、神殿は事実上“閉鎖”されたという。

◆最上級の装飾

 宴の年代は2011年の発掘調査の成果に基づいている。この調査では、2008年に初めて発掘された神殿の内部から大量の出土があった。

 長さ25メートルの建物は厚さ5メートルの外壁を持ち、内部には“神聖な空間”がある。カード氏らはそこで石の棚が付いた“食器棚”を発見。すべての壁に沿うよう設置されていた。「石の食器棚は4つあり、東西南北に近い位置に置かれていた」とカード氏は説明する。「おそらく祭壇のような機能を果たしたのだろう」。

 カード氏によれば、赤と黄の砂岩でできており、美しい仕上げが施されていた。当時の“最上級品”に違いないという。

 2011年の発掘調査では、建造物を装飾する不思議な幾何学模様の石の彫刻も出土。さらに、塗料が製造されていた証拠も初めて見つかった。壁がオレンジ色や赤、黄に塗装されていた痕跡は2010年に確認されている。

「1つの小部屋から、さまざまな色の黄土の証拠を発見した。小さな穴が開いた小型の砥石もいくつかあり、それで顔料をすりつぶしていたに違いない」とカード氏は述べる。「新石器時代の人は化粧や染め物に色を使っていたと以前から予想されていた。今回の発見は、ヨーロッパ北部で建物の壁も着色されていた最古の証拠だ」。

 さらに、粘土で雑に形づくられた人間の像も出土した。これは極めて珍しいという。「2つの目が付いた頭部と体で構成されている。あだ名はブロッガー・ボーイだ。小さな構造物のがれきの中から見つかった」とカード氏は説明する。

 新石器時代のオークニー諸島の詳細は、「ナショナル ジオグラフィック」誌に掲載される予定である。





<ナショナルジオグラフィック 記事より>