太陽嵐、8年ぶりの規模で地球に到達



地球は現在、8年ぶりの規模となる強力な太陽嵐にさらされている。太陽から放出された荷電粒子の巨大な波が1月24日午前(日本時間24日深夜)、地球の磁場に衝突した。



音史のブログ-太陽嵐
1月23日に太陽フレアが発生、2003年以降で最大規模の太陽嵐を引き起こした。

Image courtesy SDO/Helioviewer/NASA



NASAのソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)が太陽フレアからの極紫外線フラッシュをとらえたのは23日未明。それに続いて巨大なコロナ質量放出(CME)が発生した。CMEは太陽から放出される超高温ガスと荷電粒子の雲で、時速約500万キロのスピードで地球に向かい、わずか35時間で到達した。

 CMEが地球に衝突すると、荷電粒子が地球を保護する磁場にぶつかり、磁気嵐が起きて鮮やかなオーロラが発生する。スカンジナビア半島、アラスカ、カナダでは既にオーロラの増加が報告されており、24日夜に最も活発になると予想されている。

 だが強力な太陽嵐は、送電網や周回軌道衛星、GPS信号、無線通信の障害につながりかねない。航空機のフライトにも影響を与える可能性がある。

 アメリカ、コロラド州ボルダーにある米国海洋大気庁(NOAA)宇宙天気予報センターの上級予報官ビル・マータフ(Bill Murtagh)氏は、「最初の太陽フレアが非常に強力だったため、2003年10月以来の巨大な太陽放射が発生した」と話す。「放射は現在強力なレベルにあり、すべてが地球を通過するまで少なくとも1~2日間はかかる。現時点でも高緯度地域における散発的な無線通信障害が報告されている。その影響で一部の極地フライトのルート変更が行われた」。

◆太陽嵐が極地フライトに影響

 極地を通るフライトを運行する航空会社は太陽嵐を特に気にかけている。CMEの粒子は地球の磁場の影響で極付近に集中するためだ。「極地の長距離フライトでは衛星通信を常時使えるとは限らないため、従来の無線通信に依存している。しかし、太陽嵐の際は長時間にわたって無線通信できない事態が頻発する。連邦航空規制では、飛行中は常時通信可能な状態を維持する必要があると定められているが、従うのが難しくなる」とマータフ氏は述べる。

 一方、メリーランド州にあるNASAゴダード宇宙飛行センターの宇宙気象科学者アンティ・プルキネン(Antti Pulkkinen)氏は、「今回の太陽嵐は実は中程度のレベルだ。地上や宇宙の設備に大きな障害は起きないだろう」と言う。

◆2013年にかけて太陽嵐が増加

 コンピューターモデリングの進歩と太陽観測衛星のおかげで、宇宙気象の予報精度が高まり、太陽嵐の到達時間は数時間の幅で特定できるようになった。「今回のCMEに関して、我々のモデルは実際の到達時間から13分しか外れていなかった。驚くべき結果だ」とプルキネン氏は満足そうに話す。

 太陽は現在、2013年の極大期(11年周期の太陽活動のピーク)に向かっている。太陽嵐の規模や頻度が増加するため、モニタリングや予測がさらに重要になると考えられている。「2013年が近づくにつれ、太陽ではより強力な爆発が起きる。その一部が地球に向かってくるのは間違いない。今回のような現象は一層増えていくだろう」とプルキネン氏は述べている。






<ナショナルジオグラフィック 記事より>