<電波時計>

標準電波を受信し,時を刻む電波時計。何より正確さがウリだが,強い衝撃や磁界を受けると針が動いてしまい,表示時刻が狂うことがある。電波時計メーカー各社は,それを検出し,針位置を自動で補正する機能の開発を競い合っている。

 その中の1社,カシオ計算機は,秒針用歯車のズレと分針用歯車のズレの両方を,1組の機構で検出して補正する機能を考案。時針/分針/秒針を駆動する「タフムーブメント」に搭載した。

 毎時55分に作動するこの機能は,図の機構によって実現する。秒針用/分針用/時針用の三つの歯車が同軸上に並び,それらを発光ダイオード(LED)素子(発光部)とフォトトランジスタ(PTR)素子(受光部)が上下から挟み込む。各歯車には小さな穴が開いており,それらを光が通過するか否かによって正しい位置とのズレの有無を判断するのだ。

ところが,それだけではズレている歯車,いわば衝撃や磁界という黒幕に操られた実行犯を特定できない。一体,どのように犯人を探すのか? 各歯車,すなわち容疑者の特徴から推理してほしい。

  * 時針用歯車には検出穴が11個しかない。このため厳密には,時針が1周する間の12回の“55分”のうち1回は,

    この機構が作動しない。


音史のブログ-時計歯車構造

電波時計は、時針用、
分針用、秒針用の3つの歯車からなり、
上からLEDで光を当て、下のPTR素子で通過光を検知する

捜査を始めるに当たって,容疑者同士の関係を整理しよう。分針用

歯車と時針用歯車,中間歯車は同一のモータで駆動しているので,

どれかがシロならほかの二つもシロ。一蓮托生の間柄である。

ということは,分針用歯車と秒針用歯車に絞って考えればよい。

 さて,手掛かりとなる情報はただ一つ。PTRで光を感知できたかどうかだ。


まず,検出時(毎時55分00秒)にPTRが受光できた場合,検出穴が

唯一の穴である分針用歯車はシロだが,秒針用歯車の容疑は晴れない。

LED光が検出穴以外の穴を通過している可能性があるからだ(右図1,2)。

 そこで,犯人ではない分針用歯車が正しい位置に停止している

55分01~09秒の間に,秒針用歯車の通過/不通過のパターンを読み取る*1

検出穴とほかの穴の大きさや位置の関係から,秒針用歯車が犯人でない

場合のパターンはたった一つ。読み取ったものがそのパターンなら秒針用

歯車は当然シロ,それ以外ならクロとなる。

 次に,検出時にPTRが受光できなかった場合を考える。このときには,

秒針用歯車と分針用歯車が共にクロ,あるいはどちらか一方がクロだ(3,4,5)。

この場合の捜査はまず,秒針用歯車を何ステップか動かすところから始める。

それが何ステップであるかは捜査上の秘密として明かされていないが,

この間に複数の穴のどれかによって必ず光は秒針用歯車を通過する。

 一方,分針用歯車は停止したままだ。従って,秒針用歯車が動いている間に

PTRが受光すれば,秒針用歯車がクロ,分針用歯車がシロとなる。

 逆に,受光しなければ分針用歯車がクロだが,秒針用歯車はまだグレーだ。

そこを見極めるためには,先に犯人と確定した分針用歯車を正しい位置に

更正させる。具体的には分針用歯車を回して光が通過する位置を探すのだが,

1周以内に光が通過しなければ,秒針用歯車もクロということになる*2

 実は,1周以内に光が通過しても,まだ秒針用歯車の容疑は晴れない。

音史のブログ-時計歯車2


このときには,前述の通過/不通過のパターンから,シロかクロかを判断すればよい。メカの,メカによる,メカのための捜査に,冤罪はなさそうだ。

       <「日経ものづくり」より引用>


これは、電波時計開発現場の状況です。

電波時計が、振動または強い磁界によって針が動いてしまうという現象を防ぐ為に

新しい技術を考案しているところです。

技術というより、新しい物の考え方を取り入れようとしているところです。


このようにして、技術開発という業務が行われています。何んでもなさそうな事、完成品からでは思いも

付かないような苦労、こんな些細な事に開発屋さんは、日夜努力しております。


みなさんにも、そんな一部分を見ていただけたらと、今回ご紹介いたしました。

最小限度の部品追加で、問題を解決していくことが使命。



そして、みなさんにも探偵になったつもりで、上の理論を考えていただけたら・・・・・。