「具体⇄抽象」トレーニング 細谷功

 

 

 

1 具体⇄抽象とは

 

抽象的とは、「この部屋片付けといて」で、具体的とは、「ここの椅子を部屋の北東角に何脚ずつどこ向きに何列で置いて、机は中央よりやや南寄りでこの方向で、ホワイトボードは…」というような具合である。

 

抽象と具体は、ピラミッドの構図に似ている。

 

頂点にあるのが抽象的な概念で、下にいくにつれて具体的になっていく。

 

このピラミッドには、下から上は見えないが、上から下は見えるという、マジックミラーのような特徴がある。

 

「総論賛成各論反対」と言われる構図がまさにそれで、例えば「税金の無駄遣いはしない」という意見に皆が同意するが、ではいざ教育や医療などの補助金が減額されたり、逆に国立施設への給付が増えるとなると、それに反対する意見が出てくる。

 

これが、同じ具体度で交わされる議論である分には建設的であるが、それぞれの立場が異なるにも関わらずごっちゃのまま行われる議論は不毛でしかないが、しかしそのような状況はよく見られる。

 

このピラミッドは他にも、「理想論⇄現実論」「一般論⇄個別ケース」「話の大筋、幹⇄話の脇道、枝葉」にも当てはめられる。

 

話し合いの際は、具体・抽象度が一致しているかに注意して行う視点が必要となる。

 

 

 

2 目標設定

 

目標を設定するときは、抽象的にすると以下ようにも受け止められることから、それが「逃げ道」になり、達成されることが少なくなる。

 

例えば「ダイエットを頑張る」ではどうとでもとれる。

 

「炭水化物は一切摂らない」「1週間に2回45分のランニングをする」など具体的にすることで逃げ道をなくすことができ、目標達成ができやすくなる。

 

ここで注意が必要なのが、具体的にすることにより、「サプライズ感」はなくなる。

 

決まりごとをこなすことが「当たり前のこと」になり、つまらなく感じてしまう危険性がある。

 

仕事でも上司に曖昧に指示されたことでも、相手が期待した以上のことを報告できればその喜びは大きい。

 

事細かく指示されたことを守っても、どこかに「やって当然」「受け身」が生じてしまうと言えばわかりやすいか。

 

具体化により、目標は達成しやすくなるが、サプライズ感は多少減ずる、というのは覚えておいて良いかもしれない。

 

 

 

3 社会の構図

 

建築の世界では、構想は通常一人の建築家の個人名で挙げられる。

 

携わるグループ、そこに従事する人は数多くいるのに、だ。

 

例えば会社で、「一人の人間が全体の構想を作り上げる」よりも「様々な部門から代表を呼び、全員の意見を聞いて作り上げる」ことの方が良いとされるが、「具体⇄抽象」の立場から言うと、非効率であるのは否めない。

 

それぞれが努力し、それぞれがそれぞれに不満を持つ。

 

相手との抽象度の違いを考えることが、「相手の立場になって考える」こととも言えそうだ。