第71回『部屋探し』 | 五目紙物店「寅屋」

第71回『部屋探し』

今日も部屋探しに当ても無く、
街を彷徨う。
久し振りに知人に会う。
部屋探しを話すと意外や意外、
来るなら来い、
今、
叔父の家で世話になって三階で一人暮らし。
早速帰り、
移転の話をして警備に付き合いを頼むが、
皆は尻込みをする。
邦人の移転を狙って、
昼日中に強盗が出没して、
移転の荷物を奪われ抵抗すると、
袋叩きの目に会うが助ける人は無い。
移転と言っても蒲団袋一つ、
三名程付き添って、
小雨降る中手押し車に、
蒲団袋一つと雨がっぱで、
危険区域に入る。
歩みも緊張する。
横をジープが走る中から、
我々を指差して何かを騒ぐ、
よし、
これを利用しよう、
負けじと、
大声で槍やり返すと、
運チャン減速して振り向き、
何かを叫ぶ。
訳の判らぬ叫びを叫びつつ、
危険区域をあとにする。
ジープの護衛着き。

移転先は邦人の邸宅地帯。
三階に案内されると二十畳程の広さ。
彼は一人で住む。
狭い部屋で暮らした目に、
全く運動場に見える。
主人達に挨拶。
敗戦時までアマ(女中)を五人程使用とか。
家族は夫婦と娘が二十歳十八歳、
奥さん小柄で娘さんも美人。
食事は家族と共にと言われる。
食事の洗い物は私が引き受ける。
買い物何処に行くにも警護を兼ねて、
お供をする。
退屈な時間は消える。
雑用は引き受ける。
臨時の使用人よろしく、
立ち働く、
食費は無料。
奥さんに信用されて、
何処に行くにもお供をする。

この家に避難する人達二十名余、
玄関の小部屋に、
老人と若夫婦と孫が一人と共に、
老人が避難生活をしている。
ふとした切っ掛けで、
暇な折りに親しく話しを老人より聞く。
話し合う程に貿易商の社長と知る。
上海にホンコンに豪州のシドニーに、
支店を持つとか。
私の生い立ち等を聞きつつ日は過ぎる。