第57回『街のいろいろ』 | 五目紙物店「寅屋」

第57回『街のいろいろ』

北京路は違った遊び場。
全体に街はダマロと違い、
薄暗く慣れぬと未知の所に迷いこんだ気分になる。
物陰より誘いの者達は差し招く。
家屋の裏側とおぼしき足下に気を付けて、
案内人に付いて行く。
上り下り、
遂に方向感覚を失う頃に案内人は部屋に入る。
部屋の中央にベットがある。
四方に椅子が数脚置かれている。
薄暗い光の下で全裸の男女が絡みあっている。
性交真最中。
終れば、
濡れた始末紙を見せる。
時には女同士の絡み合いを見る。
これは珍しく奇異の眼差しで見つめる。
又、
高い天上より淡い電灯が足下を照らす中を進むと、
廊下に慣れぬ匂いを感じる。
案内人が指差す方を見ると、
長いキセルで煙草を吸引中。
横になり無限の天空を彷徨う様に、
吸っては吐き、
吐いては吸う。
アヘン吸引中。
中国では厳しく取り締まりなれど、
ここは英国租界内、
治外法権で手が出せない。
次を覗くと全裸でアヘンを吸引しつつ性交に専念している。
説明によるとアヘンを吸引中の性交は、
この世の極楽との解説がある。
この人達は既に廃人も同然で、
アヘンを吸引しつつ生活費を稼ぐ。

新しく上海に来る夫婦を、
歓迎の宴席より連れて歓楽街に来ると、
その意想外の遊びに困惑の表情を浮かべる。
その内に慣れるのは奥さんが早い。
これが又、
我々の楽しみの一つ。
他人の男女の性交を初めて見る奥さん横を向くが、
時間と共に大胆になり、
男根挿入の様子を細かく顔を赤らめながら丁寧に見る。

共同租界内場末にユダヤ人の中小の飲み屋が軒を連ねる。
入ると狭い部屋で巨大な年増が大きく手を広げて、
笑顔で迎えてくれる。
腰と胴の周りが一メートル以上はたっぷりある。
安い酒席でお互いに母国語と上海語で、
訳もわからず喋る。
立って歩けば腰がつかえて不自由する狭い通路で、
チークダンスを踊る。
我々は腰に手を回しても届かぬ。
薄い着衣の上より乳房を求めるが、
偉大すぎて片手では間に合わず。
両手で触る。
恐ろしい性病の持ち主多数を数える。
終始圧倒されて外に出る。

貧しいクーニャン(娘)が手招く。
戸口で燐寸箱を手渡される。
中の燐寸は粗悪品で中々火が付かぬ。
椅子に着類を脱ぎ股を大きく開き、
女が椅子に腰掛ける。
燐寸を摺り火が付くと、
その火で女陰を見なされる遊び。
安いが意外と高価な遊び代金を支払う羽目に陥る。