第4回『水車踏み』 | 五目紙物店「寅屋」

第4回『水車踏み』

翌る夏
日照りで雨が降らないので、
我が家の稲田は、
全部、自己の持ち掘り池より水を水車で田へ送る。
日照りの時は田へ送る水替えで、
家族持ち場を決めて精を出すが、
順番の場合もある。
真夜中に順番が来れば、
行き水車を踏む。
学校に行けど居眠りが出る。

私の昼の持ち場は一反三畝の稲田で、
水車はヨドと言って、
直径三メートル程の丸い用具で水が入る筒が二十四個着くものである。
それを回して田へ水を送る。

池の水が多い時は、
一人では、
回し兼ねるが助太刀は無い。
四苦八苦どうにか回して、
休憩をする時は、
時期は夏休みなので夏休みの宿題をする。

弁当持ちで夕方帰るが、
楽しみはある。
水車を回す池には鮒(ふな)や鰻(うなぎ)がいるので、
底水になると網で捕り針で釣る事が出来る。
時には大きな鰻を持ち帰り夕食のお膳を飾る。

梅雨頃に、
田植えを済ませてからは、
田の水の深い浅いは稲の成育に深く関わるので、
ここが百姓の腕の見せ所である。

諺(ことわざ)に、
『夏の夕焼け水落とせ秋の夕焼け鎌を研げ』
というのがある。
夏の夕焼けは翌日雨が降るので、
田の水が深くなるから水を田より減らす。
秋の夕焼けの翌日は晴天だから、
稲刈りに最高なので鎌を研ぐ、
という意味である。
西風は翌日晴天日が多く、
東風は翌日は雨天が多い。

毎日水替えに四苦八苦の折り、
夕立雲が現れると期待して待つ。
そのまま降らず晴天の時はヨドを踏む足も重い…。

新盆の頃ともなれば、
田の水は浅水図で良いので水替えも一息着く。
それから実りの秋迄、
多少のんびり出来る。

日照り続きの年は豊作が多いが、
水替えの苦役がある。
雨の多い年は水替え無く楽をするが不作の場合が多いので、
家庭が圧迫される…。