昨日の記事に書いたように、サッポロビールのCMで村上春樹著『走ることについて語るときに僕の語ること』(文藝春秋)の何処の文章が語られているのかを知るために箱根駅伝を録画した。そして仲間由紀恵さんの声でCMのために執筆された「走ることについて語ること」が語られた。


「やっとゴールのマラトン村にたどり着く。炎天下の42キロを走り終えた達成感なんてどこにもない。頭にあるのは「ああ、もうこれ以上走らなくてもいいんだ」ということだけ。村のカフェでひと息つき、冷えたビールを心ゆくまで飲む。ビールはもちろんうまい。でも、僕が走りながら切々と想像していたビールほどうまくはない。正気を失った人間の抱く幻想くらい美しいものは、この現実世界のどこにも存在しない。」


村上春樹著『走ることについて語るときに僕の語ること』(文藝春秋)
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この著書93~94ページの文章を修正したものだった。本文は


「やっとゴールにたどり着く。達成感なんてものはどこにもない。僕の頭にあるのは「もうこれ以上走らなくてもいいんだ」という安堵感だけだ。(中略)マラトン村の朝のカフェで、僕は心ゆくまで冷えたアムステル・ビールを飲む。ビールはもちろんうまい。しかし現実のビールは、走りながら切々と想像していたビールほどうまくはない。正気を失った人間の抱く幻想ほど美しいものは、現実世界のどこにも存在しない。」


30歳で作家になった村上春樹氏。小説家にとって一番大切なものは「体力」と常々言っている。その当時煙草を止め、生活も夜型から朝型に変えた。更にランニングをするようになる。そして、今に至っては日本国内や世界のマラソン大会に参加している。

1983年ある雑誌の企画でギリシャを訪ねる機会があり、アテネからマラトンのオリジナルコースを走ることになった。この文章は、初めてフルマラソンを走り終えた村上氏が吐露したものだ。

1983年7月18日、初めてのフル・マラソンのゴールをマラソン発祥の地・マラトンで迎えた村上春樹氏。(村上春樹著『走ることについて語るときに僕の語ること』(文藝春秋)より)
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背中が過酷さを物語っている。



箱根駅伝を走った選手たちお疲れさま。そして、ありがとう。