ジョヴァンニ・セガンティーニ
(1858-1899)
アルプスの自然や
エンガディン地方の農村の暮らしを
描いた、印象派的なタッチの
イタリア生まれの画家である。
写真で見るかぎり、なかなかの美男だ。
だが、私は、彼の描いた一枚の絵が
長い間、大嫌いだった。
ウィーンにあるベルヴェデーレ宮殿。
その中の「オーストラリア美術館」。
クリムトの『接吻』で有名な、あのギャラリー。
その世紀末コレクションの中で
ひときわ私の目を引いたのが
セガンティーニの
『悪しき母たち』
だった。
なぜ、嫌いかというと
女性特有の生理的嫌悪感である。
画家の生い立ちと母親への思いを知らずに
この絵に出会ったことは、
私にとって、不運だった。
7月9日
マローヤの村を訪ねて
彼の墓地やゆかりの場所を訪ねることになった。
後年、溺愛するようにアルプスの自然を描き続けた
彼の深層心理には
母親への愛憎が、深く刻み込まれていたのではないかと
思うようになった。
エンガディンの谷を去るころ、
セガンティーニのことが
少し、好きになっていた。
つづく