ジョヴァンニ・セガンティーニ

(1858-1899)


アルプスの自然や

エンガディン地方の農村の暮らしを

描いた、印象派的なタッチの

イタリア生まれの画家である。

写真で見るかぎり、なかなかの美男だ。


だが、私は、彼の描いた一枚の絵が

長い間、大嫌いだった。


ウィーンにあるベルヴェデーレ宮殿。

その中の「オーストラリア美術館」。

クリムトの『接吻』で有名な、あのギャラリー。


その世紀末コレクションの中で

ひときわ私の目を引いたのが

セガンティーニの

『悪しき母たち』

だった。


なぜ、嫌いかというと

女性特有の生理的嫌悪感である。

画家の生い立ちと母親への思いを知らずに

この絵に出会ったことは、

私にとって、不運だった。



7月9日

マローヤの村を訪ねて

彼の墓地やゆかりの場所を訪ねることになった。


後年、溺愛するようにアルプスの自然を描き続けた

彼の深層心理には

母親への愛憎が、深く刻み込まれていたのではないかと

思うようになった。


エンガディンの谷を去るころ、

セガンティーニのことが

少し、好きになっていた。


つづく




7月4日

アンデルマット→ツェルマット間の

「氷河特急」(GLACIER EXPRESS)に

初めて乗車した。


ガラス張りのパノラマ車の両サイドに広がる

ローヌ川沿いの田園風景、

アルプスの名峰や氷河の遠景。

夢のようなひとときだった。


それが、今回の大事故である。

あの、のどかさから、死者も発生する悲劇が起きるなんて

誰が信じられるだろう。

ただ、ひたすら、亡くなられた女性のご冥福と

怪我をなさった方々の、一日も早い回復を祈るばかりだ。


私の席は、二等車だったが

イヤホンガイドと

日本語・中国語・英・仏・独・伊語に対応した

「路線ガイド(小冊子)」も付いてるし

席もゆったりで

飲み物もオーダーできた。

ワゴンサービスが通る通路が狭く感じる程度で

テーブルを挟んで、二人が向かい合う

4人がけの快適な席だった。


食堂車もあり、食事も楽しめる。

今回の事故で被害にあったのは一等車の乗客が主だった。

1等車は、席がゆったりとしている。

食事時間に重なる長時間の乗車なら

絶対、1等車の方がよい。


アンデルマット駅で、1等車の空席を確認したが

あいにく、13時56分発に空きはなかった。

ちなみに、アンデルマット→ツェルマットの

1等車と2等車の差額は

44スイスフラン(2010年7月4日当時)だった。

3500円なら、せっかくだから1等車に乗りたかったな。


ホット・チョコレートを頼んでしばらくして

グラッパやシュナップスを

高い位置からこぼさずに

小さなショットグラスにつぐ、

まるで、アクロバットショウを楽しむような

名物のドリンクサービスがやってきた。


洋ナシのシュナップスを頼んだが

かなり強いが、香り豊かで、美味だった。

目的は、飲み物ではなく

黒人女性の見事な手さばきを

写真におさめることだった。

だが、シャッターチャンスは、

微妙にずれてしまっていた。

残念!


つづく






サン・モリッツから終点のツェルマットに向かって走る「氷河特急」が、

イタリア方向から北上して、チューリッヒに向かう列車と交差する

鉄道の要所、アンデルマット。


氷河特急の発車まで、町の中心で、ラクレットを賞味。


チーズ料理には、地元産の白ワイン(ファンダン等)が、よく合う。

しかし、赤ワインもチーズには合いますよ。


夏の暑い日に、屋外で、バーベキュー感覚で、

ラクレットチーズを火で溶かして食べる習慣から、

暑い夏には、辛口の白ワインということになっただけで、

ラクレットには、白ワインが、絶対ではありません。


チーズフォンデュには、白ワインと紅茶、とよく紹介されているが、

これは、スイス関連の名著といわれている

犬養道子氏の『私のスイス』の中の文章のせいらしい。

オヤツじゃないんだから、紅茶ってね・・・。



それにしても、要所のはずなのに、妙に静かな町でした。


つづく