男は歳をとるに連れて
弥が上にも親父に似てきてしまうものだ
近しい友人が親父になって考えた
自分の親父は自分にどう接してきたのかを
僕はまだまだ親父になる予定もないしなれる兆しもない
女性は子供を授かって徐々に母親への意識が生まれる
自分の中にもうひとつの命を宿すその神秘さといったら男には計り知れない
だから女性には母性本能がある
男にはたぶんない
男は父親になることをなんとかして実感しようとする
それは子を授かってからか
生まれてからか
それとももっと先か
親父もきっと自分が父親であることを自覚することは
難しかったのだと思う
幸いにも男ふたり兄弟はほっといても大きくなるようなもので
ましてや母親の世話には随分なった気がするが
親父はずっと自分の好きなことをしていただけのような気がする
それでも僕は父に感謝するし
父親というものはそれで良いのだと思う
無理に父親になろうとする必要なんてどこにもない
僕は父親の背中を見て育った
親父がスキーやアマゴ釣りや山登りやキャンプに連れて行ってくれる姿を
ずっと後ろから見ていた
格好良かったし
一度か二度だけ連れて行ってもらったアマゴ釣りで
暗いうちから家を出て渓流に分け入って行ったのは
小学生の僕にはたまらなく楽しかった思い出だ
親父は親父であることよりも男であることを背中で見せつけた
それはきっと僕に強烈な影響を与えていると思う
僕がこうなったことを親父は不本意に思うかも知れない
いや不本意に思うわけがない
僕の父親だ
僕にはわかる
最近家族である僕には見えなかった親父の姿を聞かされることが多い
いい大人がまるで子供のようだと
それは僕のことを言っているようで可笑しかった