第9話 カシスの勇気の剣っ! | 小説製作所 FELLOW'S PROJECT REBEL

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カシス「……ありがとな…」

 勇気を取り戻したカシスは、腰に挿した剣を引き抜きました。もう、錆びついて抜けないなまくら刃ではりません。刀身がまばゆいばかりにギラリと光り輝く、猛々しくも美しい剣です。

ダンケ「お、おい、それは……」

ダンケがその美しい刀身を見て、何かを知っているような素振りを見せます。聞けば、この剣はダンケが長年探し求め、冒険をして探し回った挙句目の前でベリーデにとられてしまった伝説の宝剣だというのです。

ダンケ「なんで、お前がそんなもん持ってるんだ?」
カシス「ベリーデにもらった…なまくらだって…」

そのときになって初めてカシスはベリーデが自分に嘘をついていたことを知ります。ベリーデは表向きは冷たく突っぱねていたものの、心の奥底ではカシスを信じていたのです。カシスが勇気を取り戻してくれると。

第9話 カシスの勇気の剣っ!

 ギャラクシーハンターの空飛ぶ海賊船は、まだカシスを下ろしたところからそう遠くはないあたりを飛んでいました。地上にはさっきまでカシスがとぼとぼと歩いていた殺風景な原っぱが広がります。

ベリーデ「ここらへんで見失ったんだが…」
マスト「で、なんであのガキを探すのに、つきあわなくちゃいけないんだ?」
ベリーデ「なっ…」

マスト「だいたい、あのガキを拾ったのはベリーデ、おまえだろ?」

マストの言葉に何も言い返せません。そう、彼の言う通り、ギャラクシーハンターにカシスを招き入れたのは他でもないベリーデでした。

マスト「お前は本当に年下の男の子に弱いからな」
ベリーデ「…いいだろ、そんなことは別に」
マスト「…まだ、引きずってるのか?」
ベリーデ「…引きずるも何も家族だからな…それに
     人に優しくして何が悪い」

そう呟いた途端に当たりがうす暗くなり、突き抜けるような青い晴天は、夜のとばりの降りる夜空へと変わって行った。

ベリーデ「夜の門に入ったか…目覚めの丘の近くに来たな」
マスト「…おい、あれ見ろよ」

まだ急な明暗の変化に目がついて行けないというのに、マストは目が利くのか、船の下の景色を指さしています。流石は操縦士とだけあって目利きはいいようです。対するベリーデはまだ目が順応しておらず。真っ暗で何も見えません。

ベリーデ「んだよ、マスト…誰かいるのか…?
     レナルド、照らしてくれ」
レナルド「アイアイサッ」

レナルドが大型のサーチライトを真っ暗な大地に向け、照らし出します。そこに映ったのは目覚めの丘の景色でした。そして、マストが指さす場所にひとりの女性がいました。ライアです。

ベリーデ「あいつ、何してんだ?」

急いで、目覚めの丘に船を着陸させます。ベリーデはライアのことを知っている口ぶりでしたが、知り合いだったりするのでしょうか。

ベリーデ「また、お忍びか?」

目覚めの丘にある祠にぶら下げられている目覚めの鐘。その前にライアは立っていました。ライアの背丈はベリーデより少し高いくらい。顔つきや風貌からしてふたりは同年代のようです。10代後半といったところでしょうか。

ライア「ベリーデ、その言い方はやめろ」
ベリーデ「…鐘が…割れかけてるな」

MR.Xと名乗る謎の仮面の男が現れ、この目覚めの鐘を襲撃しました。

ライア「狙われた…ここが狙われた」
ベリーデ「この世界で最も一番大事な場所が…か…
     主犯はおそらく、闇の夢の住人達だろ」
ライア「…それなら、だいたいの顔ぶれは知っている
    …でも、知らない人だった」

闇の夢の住人まで面識があるということは、おそらくライアはこの夢の世界では重要人物なようです。だが、そのライアでさえ仮面の男を見たことがない人だというのです。仮面ですから知っている者が姿を隠しているとも言えなくはないですが、その声も気質も、ライアが知らない人物のものだったというのです。

『…仕方のないことだ、もうライトはどこにもいないんだ、どこにも…』
『さようなら、ライト』

ライア「…あんな悲しい人、私は知らない…」
ベリーデ「…でもそんなことより、この鐘は守らないとな…
     もし破壊されでもしたら夢と現実がひっくり返っちまう」
ライア「至急、王国兵を配置し、厳戒態勢を敷くわ」
ベリーデ「ああ…」
ライア「それと頼みがある」

ライアが真剣なまなざしでベリーデを見つめた瞬間、突拍子もなくベリーデに通信が入ります。ペンダントが点滅を繰り返し、聞き覚えのあるムサイ声が響きます。

ベリーデ「なんだダンケ…こっちは忙しいんだ」
ダンケ「…大変だ、ナメンジャーズが乗っ取られた」
ベリーデ「え…?」
ダンケ「部下に何人か闇の夢の住人が紛れ込んでいたらしい」
ベリーデ「バカっ! 何やってんだ! このドアホ!」

 けたたましい声は通信機能を付けた腕時計から聞こえてくるというのに、鼓膜をつんざくようで、ダンケは思わず後ろにのけ反ります。もっともダンケがベリーデに対して通信を使うなど異例の事態。一応はライバルとして、いがみ合っているのです。

ダンケ「あ~もう、怒鳴るな怒鳴るな! お前なんかに通信をよこすことから
    どれだけ非常な事態か分かれ!」

ベリーデの罵声に対し、ダンケも罵声で答えます。そのあと、ダンケは声の調子を落とし、真剣な面持ちになりました。

ダンケ「部下や要塞に細工を施した可能性がある
    ここに人質は置いておけねえ」
ベリーデ「…それはマーマレードのことか?」
ダンケ「そいつを助けにやってきたカシスのことも加えてやっといてくれ」
ベリーデ「なっ…そ、そうか…」

通信機の向こう側でベリーデの声が安堵の色を帯びて行きます。それとともにけたたましい声は穏やかで優しい声に変わりました。

ベリーデ「分かった迎えに行く」

そこで通信は切られました。でもこれで丸く収まったわけではありません。この要塞からいったいどうやって出るのか。それが大きな問題でした。3人がいる場所はこの移動要塞のコックピットの扉の前。当然セキュリティロックがかかっていて、中には入れません。しかもどうやらロックを解除するパスワードが変更されているようで、ダンケの知っているパスワードではなくなっていたのです。

ダンケ「駄目だ…開かねえ…」

脱出手段はコックピットにある非常用脱出ポッドを除いて他はありません。要塞は常に移動し続けてられているため、出入り口や壁、窓をこじ開けて飛び降りることもできません。

カシス「…開かないのか…?」
ダンケ「パスワードが変えられてやがる」
マーマレード「おじさん」

ダンケ「あ? なんだ?」
マーマレード「おじさんってムサいだけで役に立たないんだね」



……、……。




……、……。



マーマレード「いたたた、別に殴んなくてもいいじゃん…」
カシス「いや、今のは当然だろ…」

はい、カシスの言う通りです。少しおいたが過ぎましたね、マーマレード。お仕置きされた証のたんこぶが金髪のショートヘアをつっきってぼわーんと膨れ上がっています。見ているだけでいたそうですが、口は災いの元。自業自得です。

「ナメナメ~ナメ~?」

あれ?何か聞こえましたね。どうやら、ナメンジャーズ戦闘員が通りがかったようです。ってあれ?たしか、ナメンジャーズ戦闘員のみんなって電源を切られていたはずでは…。

ダンケ「あれ…? 今の声は…、ぬおおっ! 283号どうしてここに!」
戦闘員283号「ナメナメナメ~ナメナメ」
ダンケ「そうか、お前たちはトイレに入ってて難を逃れたのか」
戦闘員283号「ナメナメナ~メナメ~」
ダンケ「なにっ! 282号と284号も無事なのか、それはよかった」

どうやらダンケは戦闘員と会話ができるようです。こっちはさっぱりわかりませんが。

戦闘員284号「ナメ~ナメ~!」
ダンケ「おおっ! ほんとだ!282号、それに284号も!」

おまけに戦闘員の区別までつくようです。ロボットなので製造番号以外に大した個体差はなく、とても素人には見分けがつかないのですが。

カシス「戦闘員の見分けが全部つくのか、あいつ…」

マーマレード「おじさん!」
ダンケ「あ? なんだ?」
マーマレード「おじさんってムサいだけじゃないんだねっ!」



……、……。




……、……。



マーマレード「おじさん…すぐ殴る…」
カシス「おまえ学習能力ないだろ…」

懲りないマーマレードはともかくとして、どうやらダンケがこの移動要塞のコックピットに入る手段を見つけたようです。

ダンケ「戦闘員がロボットであることを逆手にとり、セキュリティ機械に
    ハッキングを仕掛ける」

戦闘員の頭がぱかりと開いてコードのようなものが出てきました。その先っぽについている端子をコックピットに入るドアのセキュリティ装置に接続します。

カシス「ハッキング?」
マーマレード「あ、あのクリスマスのときに買い物するとよく聞かれる」
カシス「それはラッピングだ」
マーマレード「あ、じゃあ、あの鍵穴を針金でこじ開ける…」
カシス「それはピッキングだ」
マーマレード「わかった! 他人と予約がかぶっちゃうあの…」
カシス「ダブルブッキング! 一番離れたわ!」

そうこう言っているうちにハッキングが終了したようです。ガチャリといかにも開きましたと言う音がして、コックピットの鉄製のドアが開きます。ドアが視界から消えるとそこには大きなモニタ―があり、その前に操縦桿が設置されています。ギャラクシーハンターの操縦席とは見た目が大きく異なりますが、そこが操縦室であることは明確でした。そして、そのまさに操縦桿を握っていたのがフィッキィでした。

フィッキィ「の、のああっ! ど、どうやってあの倉庫から出たでやんすか!」

カシス「出てけ」
フィッキィ「え?」

慌てるフィッキィにカシスはきりりとした目つきで剣を突き立てます。もう、恐れをなした彼はどこにもいません。

カシス「この船から出て行け!」

その場に居合わせたダスダスとガヤガヤも、逃げ出した人質に気づきます。

ダスダス「なっ! お前らどうやってここに来たダスか!」
ダンケ「答える気はねえ、さっさと俺たちの仲間をもとに戻せ」

ダンケも動かなくなった仲間、戦闘員たちを元に戻すべく、ダスダスとガヤガヤを追い詰めます。じりじりと壁に追い詰められていくダスダスとガヤガヤのふたり。ここで応戦するのかと思いきや、そんなことはしませんでした。

ガヤガヤ「ポチッ」

ガヤガヤが何かのボタンを押しました。すると、壁の一部が剥がれて、変形し、小さなロケット型の非行装置に変形したのです。これはダンケが言っていた脱出手段。脱出ポッドです。

フィッキィ「あああっ! 脱出ポッドはまだエンジンが調整中でやんす」

ガヤガヤ「へ…?」

ダスダスとガヤガヤが間抜けな声を挙げた後、脱出ポッドは黒煙を上げ、そのまま少しも浮かび上がることなく真っ逆さまに地面に墜落し、断末魔とともに爆炎に飲まれました。なんとも間抜けな最後でしたね。

フィッキィ「ああ、もう時すでに遅しでやんす…」

フィッキィがそんなふたりのあり様に大きくため息をつき、カシスの方を向き直ります。シュンとしているというよりは、どこか憑きものが取れたような表情で、その顔を下に向けてゆっくりと礼をしました。

フィッキィ「あいつらがいなくなって、でもあちきは一度
      こっちを裏切ったでやんすから、居場所のない宿無しは
      大人しく消えるでやんすよ」

そうすると一目散に、先ほどダスダスとガヤガヤの逃げ出した、脱出ポッドのあったところにできた大穴から飛び降ります。用意周到なことに小型のパラシュートを彼は持っていたようで、それを使って眼下の樹海へと姿を消していきました。これで一件落着なのでしょうか。そう思ったのも束の間、モニターにノイズが走ります。ザザザ、ザザザと鳴り響く砂嵐。そして真っ黒な画面に白い線の砂嵐、その線が太くなり、砂嵐が開け、うっすらと映像が映ります。

「…存外、楽しませてくれたね…」

そして暗くかげった声が聞こえるとともに、少年は画面の向こうに姿を現しました。

マーマレード「ら、ライトっ?!」

少年の姿かたちはライトに瓜二つでした。だが、マーマレードの呼びかけに対し、少年は無反応で、むしろそのライトという3文字に対し耳慣れないとでも言うかのように首をかしげます。

「知らないな…そんな名前は…」
カシス「自分の名前を覚えていないというのか?」

ファントム「僕の名はファントム、永遠の楽園を目指す者さ…
      カシスと言ったか…、面白い剣を持っているな…」

面白い剣というのはカシスが腰に挿している勇気の剣のことです。表情からは、興味があると言うよりはどこか嫌悪感のようなものさえ感じられます。

ファントム「カシス…おまえがそいつに選ばれるとはな…
      失うことを知らないくせに、それを怖がり、震える
      勇気からは程遠い存在だ…」
カシス「何が言いたい…? 目を覚ませ、ライト!」
ファントム「…おまえには分からない、失った悲しみなど…
     お前がそいつの何を分かっているというのだ?
      まあいい、お前のような人間がそいつを持っている限り
      本来の力など出ないだろう…、では…」

画面が再び暗転し、通信は終了しました。とりあえずここまで。まだまだ続きます。

次回予告っ!

最後に出てきたファントムってライトと同一人物だよね…、でも一向に認めようとしないし、それどころか知らないなんて言い出す始末。いったいどうなってるの?そんな中次回は、ギャラクシーハンターに帰還したマーマレードとカシスのふたりは、目覚めの鐘が狙われているという情報を耳にします。そこでその主犯を探すべく現実世界に戻ることに。でも、ちょっとなんか様子が変というか…え、母さん、どうしたの?

次回、第10話「壊れ始める現実」お楽しみにッ!