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「運命とは残酷なものだ・・・。」
ひびが入り崩れた壁に万三郎の身体は力なくもたれかかっている。
返事もせぬそれにイデアは語りかける。
「ひとはそれに抗うことはできない・・・。」
不気味な嘲笑をもらしながら・・・、
もはや抵抗することのないそれを痛ぶり、さげすんでいた。
「それはまるで理不尽で強大な力のようだ・・・。
万三郎・・・。君はそれを知らなかったんだ・・・。自分の愛情のキレイさやまっすぐさとは
無関係な、圧倒的力の差・・・。それが運命・・・。結局君は、
そのまえに、ただただひれ伏すしかなかったのさ。」
なおも動かないそれにげしと蹴りを入れる。
「でも良かったじゃないか・・・。これでいい勉強になったろうし。
君は美しく死ねた。すくなくとも君が死んだその時点では、
君の守りたいものはひとつも傷ついてなんかいないんだ。
これは名誉と言ってもいいんじゃないかな?
だけど残念・・・。運命は止まらないよ。まだ、裁きが残っている・・・。
本当に良かったね。君が生きているうちに、
自分が誰も守れないなんて言う現実を突きつけられることがなくて・・・。」
イデアは高笑いをして、広間を出た・・・。残る裁きを下すために・・・。
死穂もイブもエンマもナラクも瑠奈も全て、血祭りに上げるために・・・。
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広間の地下には冷たく湿っぽい空間があった。
種子の神職からそこに逃げ込んだ瑠奈と死穂は
小さなランタンを持って同じく地下を探索していたサタンに出くわした。
サタン「こんなところでなにしてんだ?」
瑠奈「サ・・・、ササキくん・・・。」
サタン「だからサタンだって言ってんだろうが!
なんで前回の記事から引っぱってんだよ!」
「騒がしいですよ。」
ルシフェルが、石化は解けたもののいまだに眠っているエンマを引きずってやってきた。
エンマはだいぶ引きずられているらしく服が泥だらけだ。
それに遅れてウラミも顔を出す。
死穂「ど、どうしてみんなここに・・・。」
ウラミ「種子を枯れさせる手立てを見つけたんだよ・・・。」
瑠奈「種子って・・・。」
サタン「この広間じゅうに張り巡らされた黒いツタに
大蛇の頭がくっついたみたいな化け物のことだよ。」
ルシフェル「この上の広間には見覚えがあったはずです。
かつて成鬼の襲撃を受けた時と同じ広間ですよ。
壁伝いに螺旋階段もあったでしょう。それを登っていった先に
何があったか、覚えていますか?」
死穂「聖水の・・・間・・・。」
聖水の間、広間の上部にある固くしめられた扉に封印されている地獄界のトップシークレット。
だがその実の姿は・・・。
瑠奈「いや、あれただの消火栓だったよね・・・。」
ルシフェル「その源泉がこの地下にあるのです。
防火扉を全て締め、この広間を巨大な水槽にします。
そして源泉からつながったパイプの水圧バルブを全開にすれば、
パイプごとぶっこわれて、種子は全て聖水で一網打尽です。」
・・・。・・・。
瑠奈「・・・つまりずぶ濡れになると・・・。」
ルシフェル「はい、衣服のスケスケお色気大サービスです。」
・・・。良かった小説で・・・。
サタン「まあ、おまえらのスケスケなんて色気のかけらもないけどな。AAコンビ。」
瑠奈、死穂「なんでサイズ知ってんだよ!」
ルシフェル「さてといい加減、このへべれけを起こしますか。ウラミちゃん
モーニングコールをお願いします。」
ウラミ「了・・・。」
ウラミは巨大なハンマーをエンマの頭部めがけ、かまえていた。
サタン「いや、起こす気ないよね・・・。永遠に眠らせるつもりだよね。」
それを勢い良く脳天に振り下ろす。
ウラミ「くたばれぇええええええっ!クソ親父ぃいいいっ!」
サタン「なんでくたばれなんだよ!百歩ゆずって目覚めよだろーが!」
その衝撃にさすがのエンマもようやく目を覚ました。
エンマ「い、いたいのね!ウラミちゃん!なにをするのね!」
「緊急事態です。」
ルシフェルが何かの気配を察した。
そう・・・。侵食がこの地下にまでも訪れようとしていたのだ。
「時間がありません・・・。瑠奈、死穂・・・。
わたしたちがここで侵食を食い止めます。
ですから、バルブは頼みましたよ。」
レイピアをかまえ、二人の前に躍り出る。
そこにサタン、ウラミ、エンマもそれぞれの拳、武器をかまえ、壁をつくる。
サタン「わかってるだろうな・・・。」
瑠奈「うん・・・。」
「必ず生きて帰る。笑って帰ってくる。」
その約束を背負い、瑠奈と死穂はさらに地下へともぐる・・・。
それを背中で見送ったとき、それは訪れた。
轟音が響き、壁に穴が開き、大蛇の頭が牙をむき喰らいつく。
大きくひんむかれた口にレイピアが突き刺さり、
破裂するように吹き飛ぶ・・・。
なおも触手は、大蛇は四方八方から迫り来る。
エンマも拳を突き立て、ちぎっては投げ飛ばし殴り飛ばし蹴たぐりつける。
帰るんだ・・・・。必ず生きて帰るんだ・・・。
みんなで笑って帰るんだ。
そのためには、ここで食い止めないといけない。
ただただ拳を振り上げ、戦わないといけない。
たとえそこに闇しかなくとも、夜明けを臨むためなら、その足を止めては行けない・・・。