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「消えないよ・・・。わたしたちは絶対に消えやしない・・・。」
イデアの黒い大蛇のような触手にとぐろをまかれ、囲まれ、闇に包まれてもなお、
光はそこにあった。焼夷弾によって触手に燃え移った、鈍く煙たらしくも確かな光。
それに照らされながらナラクとイブは、
そのうずたかくそびえ立つ黒い壁に刃を突き立てる。
「明けろぉおおおっ!この闇よ!明けろぉおおっ!」
触手がちぎれ青緑色の体液がぶちまける。
触手自身はもろい。しかし、その壁の分厚さは異常だ。
その上絶えず動いてるため、こちらが油断をしようものなら
すぐさま体ごと絡め取られてしまう。
それを防ぐにはただただ一心不乱に刃を振り回すしかない。
「無駄だよ。無駄・・・。どうあがこうと君たちはこの闇から出られない。
わからないのかい・・・?この闇は運命なんだよ・・・。罰なんだよ・・・。」
イデアの声が闇の中、こだまする。
必死にあらがうふたりを惑わそうと、その声は少しずつ感情を帯び激しく、大きくなっていく。
「君たちには、生きる資格も・・・ましてや、輝く資格もない。
なんでかって・・・?君たちはボクから太陽を奪った罪人だからさ。
神が裁きを下しそこねた罪人。その神のかわりにボクが裁きを下しているのさ。
いくら刃を振り回そうと、銃火器をぶっぱなそうとも、この闇は明けない・・・。」
「うるせぇえええええっ!」
イデアの呼びかけには耳も貸さず、立ちふさがる触手をぶった切っていく。
そして、ついに最後の一枚の壁が斬られた。
肩で息をするふたり・・・。だが、ふたりの前に現れた光景は、
闇の終わり・・・、朝焼けには程遠い・・・。
いや、むしろ月さえも雲に隠れてしまった真っ暗な闇夜だった。
「こ、こいつは・・・。」
「どうやら、壁に囲まれてるうちに、触手がこの広間全体を覆うほどに
根を張り広がっていたらしい・・・。」
「言っただろ・・・。この闇は明けない・・・。決して明けることなどないのだ。」
広間には、がれきが散乱し、壁には漆黒のツタが這い、
そのツタのところどころから触手やら大蛇やらが顔を出している。
「おいおいおい・・・。なんだこれは・・・。
バイオハザードのワンシーンか?」
「ああ、そうだな・・・。ゲームの中なら最高の演出だよ。
だがちょっとリアルだとキツイかもな・・・。」
荒息のなかにため息が混じる。
「なに、弱音吐いてるんだ・・・。腕よりのふたりが
そろいもそろって情けねえじゃねえか・・・。
俺じゃあ役者不足かと思ってたが、存外そうでもないかもなあ・・・。」
強がりながらも、肩を落としていたふたりの前に
その男は現れた。リボルバー式の銃をかまえて・・・。
「どうもー、飛び入り参加でいきなりだけど、
監督兼主演でお願いしまーす。」
「ま・・・万三郎・・・。」
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広間を囲う円周状の廊下沿いにある一室、
そこにはベッドがいくつか並べてあり、使用人や護衛兵たちの仮眠室となっていた。
そのベッドでエンマは眠っている。
ルシフェル「まったく、こんなときにのんきなものですよ。」
仮眠室にも、異変は起きていた。
壁を這うまがまがしい黒いツタ・・・。
サタン「こいつはいったい何だ?」
ウラミ「・・・。種子・・・。」
ウラミはそれが何なのか知っているようだ。
サタン「種子・・・?なんだそれは?植物かなんかか?」
ウラミ「似てるけど違う・・・。闇に生え、黒いツタとツルを持ち、
大蛇の頭に似た花弁を持つ。宿主に寄生することで
その身体の再生能力や耐久性を向上させることもできる。
だが宿主の感情に左右されやすく、種子そのものが
暴走することもある・・・。」
そう・・・、この広間を埋め尽くしている黒いツタ、触手、大蛇の頭・・・。
その全てが、イデアの身体に取り付いた種子なのだ・・・。
ウラミ「暴走すれば、この城もたやすく崩れ落ちる・・・。
時は一刻を争うぞ。」
ルシフェル「まったくこのシリアスな状況のときに、このダメなおっさんは、なにをやってるのか。
さっきまで大いびきかいてたくせに、すっかり静かに眠りやがってますよ。」
エンマはベッドの上で、いびきをかくこともなければ、スースーと寝息をしているわけでもない。
というか、息をしていない。ぴくりとも動かない。まるで石のように肌も服も灰色だ。
・・・・。
・・・・。
ルシフェル「というか、エンマ、やけにおとなしくありませんか?」
サタン「そういえば、さっきから全く動かないな。」
・・・・。
・・・・。
ルシフェル「・・・。あのー、ウラミちゃん・・・・。
エンマになにかしました?」
ウラミ「ああ。さっき披露宴会場で大いびきかいてたから。
石化させといた。これならオブジェでーすって言えるし。
持ち運びの時も暴れないから楽かなーって。」
・・・。
・・・。
ルシフェル「ってええええええええええええっ!!!!」
なに、この危機的状況にボケかましてんですか!」
いちおう飲んだくれでも貴重な戦力なんですよ!
どーすんですか!早く石化の呪いを解きなさいっ!」
ウラミ「仕方ないなあ。じゃあ、このたがねとハンマーで発掘するしかねえわ。
ほら、サタンも手伝え。」
サタン「おーなんか、楽しそうだなー。」
ウラミ「いいか。これはエンマを救うためだ・・・。
たとえどんなになっても諦めるなよ。」
サタン「ああ。わかってる。諦めたらそこで試合終了だものな。」
ふたりは、たがねを石像と化したエンマに突き立て、ハンマーを構える。
ウラミ「エンマ・・・。必ず助けるからな!」
「いくぞぉおおおっ!ぼくらはカセキホリダー!!!」
ルシフェル「パクりだし、全然きまってないから!というか、ウラミ!
全部あなたのせいでしょうが!」