「ごるぁああああああああああっ!死穂~っ!
てんめぇええええええっ!また、ゴミの分別を間違えよってぇええええっ!」
朝から、ゴミ捨て場にけたたましい老婆の声が響く。
どうやら、この老婆は、地獄界の町内会の重鎮のようだ。
それに、いびられているのは、エンマの居城でメイドをやっている、
甘味 死穂(あまみ しほ)・・・。
死穂「す、すみません・・・。おばばさま・・・。」
おばばさまと呼ばれている、この老婆の名前は、
釘野 出媚(くぎの でび)。おばばさまのほかにも、
デビ夫人、デビルばあちゃんなどとも呼ばれている。
デビ「すみませんじゃねーよ!だいたい、なんで、ゴミ捨てばに
おっさんが捨てられてんだよ!」
デビが指さしたのは、粗大ゴミのゴミ捨て場。
そこには、捨てられた薄汚いマットの上で、エンマが
大きないびきをかいて、寝ていた。
死穂「あれは、おっさんではありません。エンマ様です。」
デビ「もっと問題だろうが!なんで、地獄の王が、粗大ゴミのゴミ捨て場で寝てんだよ!
なんで、酒ビン抱いて寝てんだよ!なんで、『いいちこ』なんだよ!」
死穂「『お粗末なくせに、ずうたいだけ、大きい、社会のゴミ』
略して、『粗大ゴミ』です。」
デビ「うまくねえんだよ!いいから、そのおっさん早くどけて!」
死穂「え~・・・。あたしがですか・・・。言っておきますけど、このおっさんは、
自分で勝手に酔いつぶれて、ここまでふらついて来たんですよ。
このまま、ほっといていいじゃないですか・・・。」
デビ「いいわけないわぁああああっ!!そもそも、そこまで、泥酔する前に
あんたが、こいつが酒飲むのをやめさせろぉおおっ!」
ひとしきり、いびられたあと、エンマをずるずる引きずって帰る・・・。
町内会の重鎮やら、何やら知らないけど・・・、うっとうしいやつ・・・。
「あんまり、あのババアを敵に回すとろくなことならんよ・・・。
町内会の重鎮でありながら、裏で、危ない連中かくまって・・・、
やれ、商売だ、取引だと、色々なことに手を付けまくってる。
中でも、もっとも危ねえのが、外法の『呪い屋』だよ・・・。
人に恨まれるやつを、呪法によって祟り殺す・・・。
おまえ・・・。あのババアを敵に回したら、呪い殺されるぞ・・・。」
死穂「なに、人に引きずられながら、シリアスに語ってんですか!あんたはっ!
すっかり、目が覚めてるんじゃないですか!
自力で歩いてください!」
エンマ「えーーっ!めんでえよっ!シホリン、メイドなんでしょ~っ!
ご主人様は歩きたくないのだっ!シホリンにおんぶしてもらいたいのらっ!
おんぶ、おんぶううううっ!」
死穂「・・・。なぐって、・・・いいかな・・・。」
エンマ「えーーっ!シホリン、なぐるとか、言っちゃダメだよ~っ!
ご主人様は、身体が弱いんでちゅ!
死んじゃうでちゅ!あ・・・、ここ地獄なんだった・・・。
エンマ様ジョーク!HAHAHA!」
死穂「もう、いいわぁああああっ!」
さすがにこりて、エンマも自分で歩きだした・・・。
死穂「普通に歩けるんじゃないですか・・・。
というか、もうこんなことは、これっきりにしてもらえます?
お酒なんて、毎日飲まなきゃいけないものじゃ、ないんですから・・・。」
女には、わかるまいよ・・・。
女ってのは便利な生き物だ・・・。ばつが悪くなったら、涙ながせばいい・・・。
追い詰められたら、体売ればいい・・・。だが、男っていう生き物は、
残念ながら、そんなもの、持ち合わせちゃいねえ・・・。
いつだって、まっすぐな拳打って、生きてかにゃならねえ・・・。
そりゃあ、つれえもんだよ・・・。だからこそ、
この疲れはて、渇ききった喉を・・・、体を・・・、酒が潤してくれるのさ・・・。
死穂「なに、ハードボイルドなモノローグいれてんの!
イライラするからやめてくれません!」
エンマ「だって~・・・。お酒、おいしいんだもの~・・・。」
死穂「たしかに、おいしいけども。っつか、あんたは下戸だろが!
いいちこ、ロックで1杯飲んだだけであの体たらくじゃないですか!
よく、そんな、飲んだくれで、下戸のくせに、地獄の王が
つとまりますね!」
エンマ「格式と、生理的体質は関係ないだろ・・・。」
死穂「その前に、品格というものを知れ・・・。」
そんな言い合いをしているうちに、
エンマの居城についた。
「すいませ~んっ!たのま~っ!開けてくれぬか~!」
その城門の前で、ひとりの少女が、
門の大きな鉄製の扉をノックしている。
死穂「あれ・・・・?もしかして・・・ナラクちゃん?」
その声に少女は振り向いた。
「あ・・・。死穂ねぇちゃん・・・。」