成鬼 素戔(なるき すさ)。 その名前を聞いて
死穂は、背筋が凍りついた。
自分を鏡の中の世界から救い出してくれた恩人が、自分を利用していただけ。
それに、
<太陽はボクのもの>
自分の想いを寄せる女性に対して病的なまでの執着を持っている。
「知っちゃった? あは あはははは・・・。」
まが玉から、成鬼の声がもれる。
明らかに意図的だ・・・。
サタン「なつかしい声だな。おもいだしたくもないが。
あいかわらず鼻につく声だ。」
成鬼「やあ・・・。ラップルボックだっけ?」
サタン「あのさ・・・。どっからでてきたんだよ。その言葉・・・。
サタンだよ、サタン・・・。」
成鬼「そうか、サタン。じゃあ、そいつの始末は君にまかせるよ。」
死穂「そ、そんな・・・。言ったじゃないですか!まだ、生かしておくって!」
成鬼「要領をえないな・・・。オレは気まぐれなんだよ。
それに、もともと荒れ放題の部屋だ、血が飛び散ったところで
問題はない。じゃあね。」
まが玉の通信は途絶えた。
サタンがふところから、刃先が手の指ように5つにわかれた大きな矛をとりだし、かまえた。
サタン「勝手はよくわからないが、要するに、暴れていいってことだよな?」
その矛をおもいきり突き出す。
死穂はそれをふところから取り出した柄の長い短刀でうけとめる。
キリキリと金属同士がこすれあう音が鳴り響く。
そのまま、サタンはてこの原理を利用して、短刀を押し切り、からだごと一回転して
矛を振り回した。だがそれを死穂はバックステップでかわす。
サタン「なかなかやるな・・・。さすがは成鬼のやつがよこした刺客だ。」
死穂「みくびらないで・・・。」
サタン「ふっ・・・。こっちのセリフだ。このアマが。」
サタンのかかげた矛に炎がともる。
サタン「来い・・・。丸焼きにしてやる。ディナーのメインディッシュにな。」
そう言って、サタンは手招きをした。
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一方、そのころ、成鬼のアジトでは・・・、
八岐「どこにいかれるのですか・・・。」
八岐が、玉座の間を出ようとした成鬼を呼び止める。
成鬼「ちょっと、地下にね。ひさびさに彼女の相手でもしてやろうと思ってね。」
八岐「媚貂(びてん)の相手か・・・。気をつけてください。
あいつは、あなたのことなど、ただの道具としか・・・。」
成鬼「わかってるさ・・・。だから道具は道具なりに、オレがどれだけ取扱注意なもの
なのか、わからせるだけだよ。」
八岐「それにしても、どうしてもあいつをかくまうのですか・・・。
あいつが、媚貂(びてん)がいったいどのような存在なのかはあなたもわかっていますでしょう。」
成鬼「意地の悪いことにね、ボクは、生身で人間界にいられる時間が限られているようでね。
このままじゃ、あの人に触れることすらかなわない・・・。」
八岐「・・・。どうして、そんなに『あの人』に執着するのですか・・・。
そんなことをしなくても、地獄の王になるなどエンマを殺せば・・・。ぐぁ・・・。」
成鬼は八岐の首根っこを手でつかみ、その体を持ち上げた。
成鬼「あの人を侮辱するな・・・。 あの人はボクの太陽だ。
ボクの暗くかげった心を照らす唯一の術なんだ・・・。」
八岐「・・・も・・・、申し訳ありませんでした・・・。」
成鬼「わかればいいんだよ・・・。」
成鬼は八岐の体を乱暴におろした。
成鬼「ボクがいない間、彼らのお守りをよろしく・・・。」
そう、言い残して成鬼は闇の中に消えていった。