白い光が差し込む、病室が見える・・・。
こ、ここは・・・。
あれ、たしか、わたし、修学旅行のバスの中で・・・。
あれ・・・、なんでこんなところに・・・。
病室では、一定間隔で鳴る、心電図の音が響く。
ここは、病院・・・。
瑠奈はあたりを見回した、いや、見回せない・・・。
動けない・・・。
体が言うことを聞かない・・・。
な、なに・・・。これ・・・。
自分の視界に信じられないものが目に入った。
自分につながれた、無数のチューブ・・・。
ベッドにくくりつけられ固定された、自分の体・・・。
そして、しくしくと涙を流す・・・。ひとりの女性・・・。
何なの? 何なの? これ・・・?
その疑問が、目の前の視界にノイズを走らせる。
「・・・・。わか・・・る・・・・・。」
声が聞こえる。かすれた少女の声だ・・・。
「わかるよね・・・・。あなたは、やさしいから・・・・。」
「おかあさんはわからなかった。 なにもわからなかった。」
うたうような、泣くような、不気味な声。
「わたし、あそびたかった。 でもできない。」
「かあさん、しばりつけた。 かあさん、しばりつけた。」
「でも、わたし、ほんとうは・・・。」
・・・・。
瑠奈「ハッ・・・・。 はぁ、はぁあ・・・。」
夢だった・・・。
一条「大丈夫か? あ・・・・。」
瑠奈は、見てしまった・・・・。
自分の手が・・・・、がっちりと、一条くんの手を握っていたのを・・・。
瑠奈「ちょっと、一条くんっ!!」
一条「あ・・・・、わ、わるい・・・。 でも、お前も悪いんだぞ・・・。寝たまま急に、俺の手
つかんで・・・。」
瑠奈「言わないで!は・・・。なんでもないわよ!」
一条「・・・。あ、おお・・・。」
ちょっと、気まずくなった・・・。
本当を言うと、ずっと握っていたかったんだけど。
「え~では、まず最初の目的地に着きました~。」
瑠奈「目的地・・・。えっと、どこだっけ?」
一条「小岩井農場じゃなかったか? たしか・・・。」
寺嶋先生の説明が入る。
寺嶋先生「これから、みなさんには、自由行動してもらいます。 えっと~今が
11時34分ですから。 今から2時間・・・。13時40分まで、自由行動です。」
来たっ! 自由行動、待ってました!
瑠奈「一条くんっ! 行こっ!」
一条「う、うん・・・。」
バスをふたりで降りようとすると、見てはいけないものが目に入った。
身を互いに寄せ合って爆睡する百合と村下くん・・・。
百合「す~・・・・。す~・・・・。」
村下「く~・・・・。く~・・・・。」
・・・・。
七音「おもっきり、ふたりして、よりかかって寝とるな・・・。」
七音と雪が後ろの席から、見物してる。
瑠奈「・・・・。起こしにくいね・・・・・。」
雪「あんたらもええ勝負やったで。」
・・・。バッチリ見てたんかい・・・。
七音「カメラで写真もとってあるで! 帰ったらまっさきに現像したるわ!枕元においときや!」
瑠奈「いらねえよっ!」
わたしが入れたツッコミで、村下くんが目を少し開ける・・・。
そして横目でちらりと百合の寝顔を見て・・、すこし、にやりと口元をゆるめ・・・
また、目を閉じた・・・。
七音「このスケベ!!」
村下「いたっ!!」
七音の鉄槌(てっつい)がおりる。
村下「なんだよ! いいじゃん! かわいいんだから。カワイイは正義だろっ!」
七音「起きろ。もう、着いたわ。」
百合「ふぁ~あ・・・。 あ・・・。村下くん・・・。ごめん・・・・。よりかかってた・・・?」
村下「うん? あ、ああ・・・。いいよ・・・。」
百合「もう着いたの?」
村下「ああ・・・。」
百合「じゃあ、行こう、七音と・・・、ユッキーと、あたしと村下くんとの
4人で行こうよ!!」
瑠奈「え、あたしは?」
そう、きくと微笑みながら、無言で一条くんの方を指さした。
百合たちがバスを降りたあと・・・。
一条「百合って・・・。気づかないうちに、敵をつくりそうだな・・・。」
瑠奈「とりあえず、茉莉ちゃんと樹里ちゃんには、気をつけんと・・・。」
一条「だな・・・・。」
瑠奈「ま、お腹もすいたし、行こうよ・・・。」
わたしはバスを降りた。
その手は自然に、一条くんの右手をつかみ、引っ張っていた。