「あれ?? 俺の傘がないっ!!」
一条くんが玄関で騒いでる・・・。
「どうしたの・・・?」
「来るときもってきてた傘がないんだ・・・。」
「ええ?なんで、ナラク、一条くんの傘・・・。あれ・・・?ナラク・・・?」
瑠奈がリビングを見やると、先ほどまでいたナラクが姿を消していた・・・。
「ナラク、どこいったんだろ?」
ナラクは、瑠奈の家の裏手にいた。そして、そこには、もうひとり・・・。
一条の傘を差してひとり立ちつくす、黒沼 貞子(くろぬま さだこ)・・・。
ナラク「よっ!傘ドロボウ!!」
貞子「あらら・・・。バレちゃったか・・・。ちゃんと返すよ。あとで・・・。」
ナラク「相合傘でか・・・?」
貞子「さすが死神ね。何でもお見通しってわけだ・・・。」
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一条「よわったな・・・。外、まだ降ってるし・・・。」
瑠奈「・・・・・。」
一条「傘借りていいか?」
瑠奈「ええ・・・。お父さんがつり行くのに持っていっちゃって
もう一本しかないよ・・・。
お母さんのは勝手にかせないし・・・。」
一条「たのむよ・・・。明日返すからさ・・・。」
瑠奈「・・・。」
一条くんの困った様子を見てあたしはあることを思いついた。
瑠奈「送っていこっか?家まで・・・。」
一条「え・・・??」
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ナラク「いいのか?もう諦めたのか、あいつのことは?」
貞子「まさかそこまで見破られるとはね・・・。うん、諦めたよ・・・。
わざわざ、姿を変えたのもそのためなのに・・・。
髪も長くして・・・、背丈も一条くんに合わせて・・・、
キレイになったのに・・・。
全然ぐらっと来てくれないんだもん・・・。」
ナラク「・・・。生きた人間と幽霊がつりあいとれるわけないだろ・・・。」
貞子「わかってるよ。ただ、気になったの・・・。一条くんが好きなコが、
どんなコなのか・・・。正直、とってもいいコで、安心した・・・。
わたし、あのふたり、応援したくなっちゃった・・・。」
そう言うとまた、彼女は可憐なほほえみを浮かべた。
貞子「じゃあ、傘返してくるね・・・。」
ナラク「おお、またな・・・。」
ふたりは手を振り合って別れた。
=====
瑠奈「ごめんね・・・。せまくて・・・。」
一条「お、おお・・・。」
雨に降られて一条くんを、自分の傘に入れて送る・・・。
なぜだか、彼の隣にいると鼓動がはやく感じる・・・。
でも今までのように苦しくはなかった・・・。
まるで、心がスキップしているような不思議な感覚・・・。
一条「あ、あの・・・。俺もごめん・・・。」
瑠奈「なんで・・・?」
一条「いや・・・、貞子とばっか話してたから・・・。」
瑠奈「き、気にしなくていいよ・・・。つ、付き合ってるわけじゃないし・・・。」
そう、おもむろにつぶやいたとたん、
あたしの脳裏をナラクの言葉がよぎった・・・。
「誰かを好きになるってのは、怖いことなんかじゃない。
楽しいことだ・・・。」
そうか・・・。
そういうことか・・・。
あたしは、あたしは・・・。
一条くんのことが好きなんだ・・・。
そう思うと心は水溜りをよける足のように跳ねだした・・・。
瑠奈「あのさ・・・。一条くん・・・。」
一条「なに・・・?」
瑠奈「あたし・・・。一条くんのこと・・・。好きだよ・・・。」
一条「そ、そうか・・・。じゃあ・・・、俺も言っていいかな・・・。」
瑠奈「なに・・・?」
一条「俺も好きだよ・・・。瑠奈・・・。」
正直あまり、おどろきはしなかった・・・。
なぜか、ずっと前からそのことは感じていたから・・・。
そんなことより、驚いたのは・・・。
瑠奈「じゃあ、また明後日、学校で・・・。バイバイ・・・。」
一条「お、おお・・・。」
そう言って彼を彼の家の玄関まで送ったあとの、ひとりで帰る、傘の広さだった・・・。
=====
一条「ただいま・・・。」
そう言って、一条が玄関を開けると、そこにはなくしたはずの傘がおいてあった。
しかも、さっきまで使っていたかのようなびしょぬれの状態で、
玄関の土間に横たえてあった・・・。
一条「あいつのしわざだったのか・・・。」
そうつぶやくと、ケータイのバイブレーターがなる・・・。
ケータイの画面を開くと・・・、
画面はいつもの待ち受け画面でもなければ、
あの古井戸が映ったモノクロの世界でもない。
ただ、真っ黒な画面に白抜き文字でこう記されていた。
<てへっ、ばれちゃった。(=⌒▽⌒=)ゞ >
「ありがとな・・・。」
そうつぶやいて、一条はケータイを閉じた・・・。