イギリス英語の部屋

イギリス英語の部屋

いろいろなアングルから英国ライフ&情報をお届けします。英語のボキャブラリーもゆる〜く増えていきます。

                                                              

 

カンヌ映画祭は毎年5月に開催されています。コートダジュールと呼ばれるディープ・ブルーの海が広がる地中海沿岸の地域にあるカンヌは5月頃から爽やかな晴天が続き、本格的な夏へと繋がっていきます。

 

コンペ部門の作品が正式上映されるのはパレ・デ・フェスティバルという広い会場の中に設置されているリュミエールと呼ばれる劇場です。スクリーンが2階の席から鑑賞しても十分な大きさで、一段一段階段を登り下りするには高さがあって暗闇の中で移動するのは大変なのですが、この劇場の素晴らしさは前に座っている人の頭でスクリーンが邪魔されることがないということです。上映中の飲食と携帯電話の使用は厳しく禁止されています。でも普通の映画館では経験できない映画の醍醐味が味わえます。

 

ハリウッドの大物俳優の映画はこのリュミエールで上映されることが多いのです。レッドカーペットが敷かれた階段をゴージャスなドレスで歩くセレブ達の姿を写真や画像で観たことのある人はきっといらっしゃるでしょう。あの赤い絨毯はもしかするととってもふわふわだろうと想像している方もいるかもしれませんが、誰も滑ったり、転んだりしないように、かなり硬い素材でできています。ロングドレスや着物を着て優雅に上がるにはかなりの努力が必要です。

 

ここでの正式上映にはブラックタイでというルールがあります。男性なら黒のタキシードと蝶ネクタイ、白いシャツに、黒の革靴。女性には色の規制はありませんが、ジーンズやカジュアルな服装は禁止で、スニーカー、ビーチサンダルは禁止されていて、たとえ招待状を持っていても係員から追い出されます。過去に有名な監督や俳優が服装チェックでNGとなったことは何度もあります。

 

 

マドンナが『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』というドキュメンタリー映画をここで正式上映した時、長いピンクのショールをまとって登場。レッドカーペットの階段を上りきった時に押し寄せたカメラマンたちの前でショールをパーっと広げ大きな歓声が上がりました。彼女が身にまとっていたものは先がとんがったブラと太ももを隠した長いガードル。つまり下着姿を大胆不敵にも披露したのです。もちろんこれはルール違反でしたが、お咎めはありませんでした。この騒動の中で若き日のジャン=ポール・ゴルチエがニンマリと笑っていました。

 

 

でも私が大好きな試写室はプレスルームから見通せるアニエス・ヴァルダ。フランスの女性監督の名前にちなんだこの試写室は外で待っている間に太陽がさんさんと降り注ぎ、海の香りと潮風が楽しめるんです。今、自分は南仏にいるんだと感じる最高の瞬間を味わえるのです。

 

Photo & Text:  Takako Imai