「ゲゼルシャフト」とは、ドイツの社会学者テンニースが提唱した概念で、血縁や地縁関係によって結合された共同体組織である「ゲマインシャフト」と対応して用いられるもので、実用主義や合理主義によって裏打ちされた契約をベースとした社会の有り様を示しています。
要は、ゲマインシャフトとは、我々の意思とは無関係に、先天的に組み込まれた社会組織であるのに対して、ゲゼルシャフトは後天的に自らの利害や意思を踏まえて獲得した社会組織であると言えます。
テンニースは「古きゲマインシャフトから新しきゲゼルシャフトへ」という変化を社会の発展過程として捉えていて、その意味では、「社会は進歩する」という進歩史観が背後に潜んでいます。
私自身は、古きものが必ずしも悪しきものと考えておらず、実際に、大学の卒業論文では、進歩史観に基づく富永健一の社会・経済の発展段階説を徹底的に批判しました。
その後の社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)論の隆盛などを見ると、近代的合理主義によらない共同体主義の新たな可能性も生まれており、「ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへ」というよりは「ゲマインシャフトも、ゲゼルシャフトも」という視点が重要であると考えています。
ゲマインシャフトが色濃く残っているのが政治の分野で、これだけグローバル化・情報化した社会でありながら、政治家を選択するときには、その人の政策や実績ではなく、「地元から」という言葉が乱発され、それで、何となく納得してしまう傾向にあります。
政治というものの本質が、権力と予算の獲得競争という一面は否定できないものの、個別地域の部分最適が必ずしも全体最適にはつながらず、国全体としては膨大な財政赤字を抱え込んでしまった事実を鑑みると、日本社会はもう少しゲゼルシャフトへ舵を切る必要があるかなという気がします。
欧州における移民問題も、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトの対立という観点から捉え直してみると、また違った見方ができるということに気付かされました。
テンニースを読んだ上で、同じドイツの社会学者であるマックス・ヴェーバーも久しぶりに読んでみようと思います。
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