行程:ボローニャ→ジェノヴァ
歩行距離:22.08km
今朝は朝からボローニャ市内視察。
イタリア都市研究の第一人者であり、スローシティに関する著書も書いている陣内秀信氏は「それはボローニャから始まった」と書いているし、1980年代に「地方の時代」を高らかに謳った地域経済学においても、内発的発展論のモデル都市としてボローニャを取り上げています。
なぜボローニャがそこまで注目されるのか?
ローマのような政治都市であり、かつてのローマ帝国の首都であった歴史もなく、ミラノのようなイタリア屈指の経済都市というわけでもなく、ヴェネツィアのように唯一無二の観光都市というわけでもない。
何もしなければ、一地方都市として成り下がってしまう可能性があったボローニャが、1970年代に取り組んだのが、ニュータウンや郊外住宅地の建設という住宅(生活空間)の量的拡大路線ではなく、歴史地区を中心に適正規模に収まった、個性的で質の高い都市空間づくり。
その政策は、従来の文化財としての街並み保存の枠組みを超えて、本来、生活空間として優れ、コミュニティを育んできた歴史地区を再生しようとするものであり、そのスローガンが「保存はしたがって革命である」とまで言い切るほど、経済(資本)の論理ではなく、住民(生活)の論理で推し進めたものでした。
今回のボローニャ散策では、20kmを超える歩行距離を数えましたが、歴史地区内は歩行者天国であることはもちろん、それ以外の箇所もポルティコと呼ばれるアーケードが絶え間なく続いており、当然のことながら、そこは歩行者道路となっています。
かように、歩行者にとって歩きやすい街であれば、当然のことながら、回遊性が高まり、アーケードに沿って並ぶ小規模商店も経営が成立しやすい経済環境になります(自動車社会における郊外型大型店舗によって商店街が衰退している日本の地方都市とは正反対)。
また、歩行と自家用車との間の交通手段ということで、自転車に対して政策的にもかなり重点を置いているようで、中心地であっても、自転車用道路が、歩行者用道路と同等に整備されていました。
鹿児島市内でも、最近、自動車用道路に沿って自転車専用レーンが整備されつつありますが、そんな部分的対応ではなく、街全体に自転車専用レーンが網羅されている感じです。
私もこれまで数多くのイタリアの諸都市を歩いてきましたが、事故に遭わないよう緊張感を張り巡らせることなく歩けたのは、ヴェネツィアに次いで2都市目でした。
ヴェネツィアは、Googleマップでも、ナビしきれない迷路構造の街づくりとなっていて、迷わないようにするという、別の緊張感があるため、完全なストレスフリーの散策はボローニャだけと言えます。
先に書いたように、ボローニャは歴史地区の再生に相当の尽力をしてきた経緯があります。
しかし、それは近代化を否定するというわけではなく、近代的建築物や施設も多々整備されています。
それがバランスを崩すことなく、景観としても壊れてないのは、ひとえに生活感覚と経済活動の二律背反ではなく、生活重視の経済最適化という均衡点を見出そうとしたボローニャ市政府のデザイン感覚であり、それを支持した市民の成熟度と言えるかもしれません。
今回は2泊3日の滞在でしたが、FICO EATALY WORLDという、今後も注目し続けたいフードテーマパークもできたことだし、暫くは常連として訪問する都市になりそうです。