私の宝物のひとつに、ローマ帝国期のデナリウス銀貨、しかも、五賢帝の一人であり、紀元2世紀に同時代人からも「黄金の時代」と呼ばれる帝国の全盛期を築いた人物である、トライアヌス帝の顔が刻まれている銀貨があります。
本村凌二『教養としての「ローマ史」の読み方』を読みながら、賢帝から愚帝、更には、残酷さ故に歴史から抹殺された皇帝など、様々な皇帝の人間像に触れています。
その中で、トライアヌス帝は、次のような「最善の皇帝」であったと評されています。
ネルウァはトラヤヌスを後継者にしたことでパクス・ロマーナのきっかけをつくり、トラヤヌスがパクス・ロマーナを築き上げ、後の三人の皇帝はパクス・ロマーナの維持に尽力したと言ってもいいでしょう。
「トラヤヌスは民衆には温情をいだき、元老院には威厳をもって臨んだ。それ故、誰もが彼を敬愛し、恐れる者などいなかった。敵以外には」
これは後世の歴史家カシウス・ディオの言葉ですが、まさにトラヤヌスはすべてのローマ人に愛された「最善の元首」なのです。
ローマ帝国との国境に位置し、度々の同盟関係を破棄し、領土へと侵攻してきたダキア王国(現在のルーマニア)を破り、帝国版図を最大にしたのも、このトライアヌス帝でした。
トライアヌス帝はローマに「トライアヌスのフォルム」を建設し、ダキア征服を記念する高さ38メートルにも及ぶ「トライアヌスの記念柱」を建設します。
ローマ帝国中心部に位置する「皇帝たちのフォルム」の中でも、聳え立つこの記念柱は、一際注目を集める建造物であり、トライアヌス帝の治世を想起させます。
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