本日の南日本新聞で見かけた霧島ガストロノミー推進協議会の認定制度の取組に関する記事。

 

 

 

 

 

 

 

ガストロノミーについては、日本では聞き慣れない言葉ですが、料理を中心とした、文化や芸術、歴史に農学、生物学に地質学など、多種多様な要素との関係性に関連する概念を指します。

 

欧米では、一般的には、食通や美食家と呼ばれる方々が、評論や研究、執筆活動に取り組んでいます。

 

豊かで高品質な食材を誇る鹿児島の料理や調理法などに着目して、ひとつの文化体系として位置付けていこう取組の姿勢については、これまでの鹿児島にはなかった先進的な取組として高く評価したいと思います。

 

ただ、一点惜しむらくは、ブランド「ゲンセン霧島」を立ち上げて、これによって認定された産品・サービスを同協議会が主体となって、販路拡大を支援していくという点。

 

かつて、イスラム教徒の宗教戒律であるハラール認証について、マレーシア政府の世界的な認証統合に向けたデ・ファクトスタンダード(事実上の基準)づくりのプロセスを調査・研究した経験があります。

 

その経験によれば、文化や宗教などの抽象的な概念が、多くの人々に認知され、受容されるような制度へと発展するためには、科学的かつ客観的な基準や指標を設けた上で、利害関係者の合意形成が図られるための、絶え間ざる検討・調整が必要になります。

 

制度を考案する側の人間が、一方的に「これはブランドなんです」「このような制度なんです」と考案して、押し付ける性質のものではないと考えます。

 

また、その結果は、往々にマーケティングの失敗として、制度考案者側に跳ね返ってくるものです。

 

ハラール認証は、ISOやHACCPなどの科学的な食品衛生管理手法をベースとして、宗教という非科学的(文化的)要素を織り交ぜながら、全体としては普遍性や汎用性の高い認証制度を構築しました。

 

これに倣えば、同協議会も、独自のブランド制度ではなく、世界的に評価され、定着しているような制度を活用するという選択肢もあるのではないでしょうか。

 

同協議会の詳細な活動内容は把握してはいないところですが、新聞報道を拝読する限りにおいては、イタリアのスローフードやスローシティー運動の理念や目標と同じくする部分が大きいように考えます。

 

一から十まで自前で対応することは、初期投資やノウハウ不足などの面から、大きなリスクに晒されがちなので、それよりは、むしろ、まずは既存の組織やネットワークを活かして、十分な情報収集やノウハウ蓄積に努める方が、結果的には、成功の近道になるのではないでしょうか。

 

折角の素晴らしい取組なので、是非、成功させて、鹿児島の模範となるような実践例となることを期待します。