2月7日にキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)との間で大連立の交渉がまとまり、交渉のとりまとめ役であったメルケル首相の面目躍如と思っていましたが、これが12年以上に及ぶメルケル政権の「終わりの始まり」と分析する記事が多数見られるようになりました。
金融危機の余波もまだ完全に沈静化せず、移民問題に端を発したテロリズムへの警戒と社会の分断など、政治・経済・社会のあらゆる面で不安定化を増しているEUにとって、これまで重石としてEU各国の指導的役割を果たしてきたメルケルまで退陣するとなると、それこそEU瓦解の可能性も出てきて、これによる政治的・経済的混乱が予想されます。
なので、ドイツの政情は注意深くウォッチする必要があります。
英国経済誌"The Economist"では、”Germany agrees on a coalition at last”(ようやく連立政権が誕生したドイツ)と題する記事を掲載。
しかも、わざわざ副題として、"Unfortunately, it will look very much like the old one"(残念ながら旧連立と全く同様)という副題を付けて失望感を表しています。
有権者の失望感も大きいようで、昨年9月の総選挙で連立与党に対して明確な反対を示し、世論調査においても、CDU/CSU連合とSPDに対する支持低下を示してきたにもかかわらず、連立が合意されたことに対して、大連立政党への支持は50%切るなど、有権者の支持は得られてないようです。
Voters will surely share their despondency. Having hammered the “grand coalition” parties in last September’s inconclusive elections, they have been telling pollsters that their support for Mrs Merkel’s CDU/CSU alliance and the SPD is sliding. One poll this week gave the coalition parties well under half the votes, not enough to form a government were a fresh election to be held.
この記事の末文に記載された"Watch out for the younger, more extreme alternatives snapping at their heels."(より若く、よ過激な政治家らが後ろから足音を立てて近づいていることに気をつけろ)という警句が記述されていることが不安感を煽ります。
会員制情報サイトであるForesightにおいても、2月15日付けで「ドイツ「連立合意」で近づく「メルケル政権」の終焉」と題する記事を掲載し、The Economist誌と同様に、連立政権が、メルケル政権の退陣を促進すると見立てています。
CDUはSPDとCSUに主要なところを持っていかれ、丸裸に近い状態で合意せざるを得なかった。それもこれも少数政権、ないしは再選挙となる事態を避けたいためだった。しかし再選挙を避けたいのはSPDも同じである。再選挙になってSPDが勢いを盛り返すと予想する者は誰もいない。それにもかかわらず、SPDは実力以上のものを得、CDUは大きく譲歩した。メルケル首相の終わりが近づいているようである。
ドイツの政情不安が、EU全体の政治的安定に影響を与え、経済変調まで起こることは、日本にとっても大きなマイナスです。
ドイツの大連立政権の行方は丁寧にウォッチしましょう。