今回は、民間企業とのコラボレーションにおける失敗事例。

 私が民間企業とコラボするときには、パートナー企業が、①Value(経済的価値)で②Rarity(希少性)があり、③Imitability(模倣可能性)がない技術やノウハウを持っているか否かを重視します。

 VRIO分析であれば、上記に加えて、戦略を遂行できるOrganization(組織体制)があるか否かも、判断基準になるところではありますが、大部分が中小企業で占める鹿児島県内企業にとっては、万全の組織体制を持っている企業が例外的。

 なので、私の理論では、Organizationよりも、パートナー企業が有するNetwork(人脈)を重視しています(勝手に「VRIN分析」と名付けました)。

 無軌道・無原則にコラボ事業をしているわけではなく、一応、私なりの見立てや分析を踏まえて、是々非々で取り組んでいるわけですが、コラボ事業のポテンシャルとしてはOKの場合でも、実際にやってみると、失敗に終わったケースは多々あります。

 その一事例として、通常であれば、事業の進捗につれて、お互いに信頼関係が深まっていき、事業の終了時点では、Win-Winの結果になるところが、成功しすぎたが故に、Lose-Lose関係になってしまったケース。

 海外進出を希望する強烈な個性と独創的な技術を持った経営者(個人事業主)が、周囲の関係者の仲介により、私に紹介されました。

 その経営者のビジョンや技術などを聞きながら、私のノウハウやネットワークを提供することで、相乗効果を発揮できる可能性をイメージできました。

 ただし、コラボ事業で留意すべきは、相乗効果を発揮することよりも、利害関係者の目標を明確にすること。目標が不明確な中で、事業を進めると、えてして途中で空中分解するリスクが高くなります。

 そこで、私から出した条件(目標)は、「鹿児島に外国人観光客を呼び込むためのコンテンツを提供し続けること」というシンプルなもの。鹿児島に本拠地を構えたまま、鹿児島で売り続けてくださいということ。

 しかし、その約束は反古にされかかりました。

 私が持っているネットワークを駆使して、現地メディアも巧みに活用した結果、現地で大きな反響を呼んだがために、現地で展開してほしいという投資話が、パートナー企業に持ち込まれました。

 そして、パートナー企業は、何やかんやと理由を付けて(「海外進出は長年の夢だった」「鹿児島に本拠地を構えたままでも海外展開は可能」)と、投資話に乗る素振り。

 事ここに至って、私は投資話を持ちかけてきた投資家と直接協議。

 パートナー企業の海外進出に当たっての私の側面支援の実態を説明するとともに、支援と引き替えの条件も明らかにしました。その上で、「ビジネスにおいて、最も重要なことは、契約を誠実に履行するという信義。投資家のあなたにとって、信義の重要性を改めて説明するまでもないでしょう」と正当性を訴えました。

 すると、その投資家も、これまで無数の投資案件をこなしてきた海千山千の強者の御仁だからこそ、「信義」という言葉に共感を示してくれて、パートナー企業のスキルや技術は評価するが、海外進出のパートナーとして投資することは撤回してくれました。

 私も、その企業とは、以後は一切のお付き合いをしていません。大きく飛躍をしたという話も聞かないので、一攫千金を夢見て、結局は夢そのものを台無しにしたのではないでしょうか。

 この件から学んだ教訓は、「どれほど有名であっても、卓越した技術があっても、ビジネスにおいては信義が最優先。信義なくして飛躍なし」ということ。