昨夜の選挙結果報道後、①マス・メディア関係者(2名)、②30代の女性有権者、③40代の男性経営者(2名)、④50代の女性選挙運動員とLINE、Facebookメッセージ、SMSなどを駆使しながら、今回の選挙における有権者の反応等に関して意見交換しました。
7月8日付けの南日本新聞で、鹿児島県政の課題に関する5項目の基準について、「医療・福祉」がもっとも高く、次に「経済・産業」を重視するという電話世論結果が報道されていました。
また、投票日直前あるいは当日、有権者の反応や投票行動を知りうる立場の方々からは、やはり重視すべき課題は、依然として「医療・福祉」と「経済・産業」であったということでした。
ここで、我々が疑問に思うのは、重視すべき課題が明らかでありながら、他方で、具体的な財源、着手期限、施策展開や工程が不明確なマニフェストを掲げた候補がなぜ多数票を獲得したのか、ということ。
これについては、メディア関係者が「理屈の問題ではなく、そういう『空気』だよ」と言いました。
山本七平の『「空気」の研究』を思い起こし、論理ではなく、場の雰囲気やメンバーからの同調性に支配されていたという仮説がひとつ。
また、別の仮説としては、企業経営者が言っていた、「県政は県財政がよければ良いわけではなくて、実際の県民の生活はどうか」「施策の効果がなかったわけではなく、感じられなかった」という有権者から見た政策効果を十分に説明しきれなかった、というものが挙げられます。
さらに言えば、別の仮説として、今回の選挙では現職のサイン・コサイン発言もあって、女性の投票活動も積極化して、投票所では夫をリードして投票を促す動きもあったようです。
これまでの組織選挙が、男性をターゲットとしたものであったことと比較すれば、アプローチしにくい面もあったのではないでしょうか。
これに加えて、18・19歳の選挙権も加わり、より複雑な投票メカニズムになったのではないかと考えます。
これらにどう対処すべきであったかと言えば、「各ターゲットの興味・関心事項を満足させられる政策を語り合う適切な『コミュニケーション戦略』を取る」ということです。
実績があるから、結果を出しているから「県民はわかってくれるであろう」というマインドでは通用しない時代になりつつあるのではないかということです。
でも、このことは政策の実務者や、我々の研究者からすれば、想定すべからざる事態です。
なぜなら、効果的・効率的な政策を実施しても、きちんとしたコミュニケーションをとれなければ無意味であるから。
逆に言えば、有権者とコミュニケーションを取れさえすれば、いい加減な政策を実施した(あるいは約束する)としても、それはあまり問題視されないということです。
当研究会のマニフェスト比較分析表を使用して、有権者に説明を実施したところ、投票先の変更を実現できたという事例が多数報告されたことを鑑みれば、政策実務者や政策研究者は、その業界に慣れ親しむあまり、有権者から見た政策の有り様や効果をわかりやすく説明できてないのかもしれません。
有権者からすれば、「経済効果○○億円」が大事なのではなく、「経済効果○○億円によって、△△に□□円のお金が落ちて、その販売額が××円に伸びて、新規雇用者◇◇名の雇用が増えた」ということこそが大事なのではないでしょうか。
そこまで説明する必要がある、あるいは、説明が可能なのかという問題があるのですが、ソーシャル・メディアにより一人一人の個人が発信力を持つ時代なので、行政組織からの一方的情報を押し付けて、「理解させる」のではなく、双方向でコミュニケーションして「納得してもらう」のが、今後の選挙で重要なのではないかと考えました。