4選を目指す現職と新人との一騎打ちになった鹿児島県知事選挙。
 
両名ともマニフェストを掲げて、選挙戦がスタートしていますが、長年、政策を研究してきた身として、重視すべき点は、「実績」と「政策の実現可能性」。
 
実績については、現職と新人では、現職に圧倒的に有利であり、評価基準に設定するのは難しいため、政策の実現可能性という観点からマニフェストを分析したいと考えます。
 
まずは、現職のマニフェストですが、3期・12年の実績を踏まえて、極めて堅実という印象を受けます。
堅実であるが故の地味さはありますが、当選後、4年間で実現あるいは道筋を付けることができるプロジェクトを選定した感じです。
 
これに対して、新人のマニフェスト。
 
マニフェストが「具体的な数値目標・達成期限・財源などを示した公約文書」という定義であるならば、財源面での実現可能性に乏しい政策提示と言わざるを得ません。
 
こう言っては失礼かもしれませんが、聞こえの良い政策を羅列して、有権者の興味・関心を引くことが主な目的で、政策の実現性などは後回しという魂胆ではないかと疑ってしまいます。
 
地元メディア関係者によれば、立候補宣言時に、「現在の県民所得を倍増する!」と大言壮語したらしいですが、そうすると、日本一の東京都の都民所得をはるかに超えると、地元メディアからも指摘されて失笑されたらしいです。
 
さすがに、それを恥ずかしいと思ったのか、最近の記者会見では「3期までの間に一人当たり県民所得の全国トップ10入り」に下方修正(?)したようです。
 
それにしても、トップ10入りを本気で考えるための公約とは思えません。
 
コメンテーターという職業は、第三者的立場で批評・批判するのが仕事ですが、言い換えれば、利害調整に必要なギリギリの政治判断を行う経験や気概を持っているか、大いに疑問です。
 
その具体的証左として挙げられるのが、原発問題への対応。
 
反原発(=原発即時廃止)派と合意した政策事項について、原発問題に関する諸問題を検討する「原子力問題検討委員会(仮称)」での討論内容をベースに、県としての対応を確立していくとしていますが、百家争鳴の議論が想定される問題については、議論のプロセスよりも、「決断」することの方がはるかに重要です。
 
自然再生エネルギー社会の構築も政策合意事項らしいですが、その実現はまだまだ先の話で、その間のエネルギー政策を原発なくしてどう担保するのかという点について、新人から見解は述べられてないと考えます。
 
都合が悪いことを隠して、バラ色の未来を誇張することで、一時的な人気取りはできたとしても、時間が立てば、政策運営能力がないことは、すぐに化けの皮が剥がれます(英国のEU離脱がそうでした)。
 
長期の自民党政権から民主党政権への移行で、メディアの誘導によって、国民も「Change!」を叫んで陶酔状態のように、政権交代を許しましたが、その後の民主党政権の体たらくで、如何に日本の国益や安心・安全が損なわれたかは、まだ記憶に新しいです。
 
英国のEU離脱に始まる国際経済の不安定化や、少子高齢化による地方経済の疲弊など、ここで失敗しても、セカンド・チャンスが許されるといった、悠長な状況にないと考えております。
 
新人のマニフェストが、如何に大衆受けを狙った「パンとサーカス」政策で、実現に乏しいものか、私のこれまでの経験や知識の範囲で、可能な限り分析していきたいと考えます。