ビジネス誌『週刊ダイヤモンド』のWebサイトである「ダイヤモンド・オンライン」で興味深い記事が二つ掲載されていました。

一方は、財政学の大御所である井堀利宏氏の「〝現状維持″が最悪の選択である:財政健全化を阻む壁」と題する連載。
http://diamond.jp/articles/-/88824

もう一方は、元財務官僚である高橋洋一氏の「増税にこだわる学者はどこが間違っているのか」と題する記事。
http://diamond.jp/articles/-/89216

誌面上での討論というよりは、高橋氏による井堀氏の主張に対する批判というような体裁になっていますが、ダイヤモンド社としては両論併記という形でバランスを取ったというところでしょうか。

この両記事のどちらに軍配を上げるべきかいえば、私は高橋氏の主張を支持します。

というのは、「財政を家計で例えると…」と新聞などでよく見かける対比ですが、その記事では、1年間の年収をベース(専門用語でフロー)としており、過去の貯蓄に相当する部分(専門用語でストック)は、あえて(意図的にでしょうが)無視されています。

年収は低くても、過去の貯金をうまく資産運用して、全体としてプラスになっていれば、現状維持のままでも、どうにかこうにかやり繰りできるのではないかという気がするのですが。

その意味では、国家財政を「家計」に例えるよりも、「大企業」ととらえて、資産・負債・資本の総体であるバランスシート会計で分析する方が適切といえます。

高橋氏は、バランスシートで見た場合、日本の国家財政は、わずか100兆円足らずであることを指摘します。

井堀氏の主張は、そこをすっ飛ばして、「とにかく財政赤字で、将来世代へ負担を残すのだから、財政再建=消費増税を急ぐべき」というもの。

どちらが、より冷静な議論を展開しているかは火を見るよりも明らかですね。

財政再建論者=消費税増税論者の「ギリシアの二の舞になる」などの他の主張についても、経済学の観点からは明確に否定されている(ノーベル経済学賞受賞者であるクルーグマンやスティグリッツが消費税増税延期を勧告したことは記憶に新しいです)のに、遮二無二になって増税主張を繰り返すことは、どこぞの省庁の意向が強く働いているからかもしれませんが。

ここらへんの議論については、また別の機会に。