僕が吹いているサックスなどの管楽器奏者は、ジャズにおいては、「フロント」とか「フロント楽器」などと呼ばれます。
ステージ上で一番前で演奏するからに他ならないと思いますが、我々は大きな権限を持つとともに、大きな責任も負っているのです。

我々はとにかくメロディの専門家です。役割の第1はそれです。なので、ある意味ボーカリストと同じです。

ボーカリストは、譜面など見ずにメロディを覚え、なおかつ歌詞を覚えた上で、ストーリーを演じなければなりません。

しかし楽器だと、読める人は譜面をみながらでも、やろうとすればできちゃいます。でも、メロディのスペシャリストの矜持というものがあるなら、本番でそれをするのはやめていただきたいですね。

逆を言えば、伴奏楽器側から「あの曲やろうよ」と言われても、やり慣れていなくて自信がない場合は、堂々と断っていいと思います。(ただし、次回に備えて、その曲は必ず練習しましょう!)

そして、スペシャリストであると同時にゼネラリストでもあらねばならないのが、フロント楽器の立場です。

具体的には、テーマメロディや自分のインプロビゼーションにおけるストーリー展開はもちろんのこと、その後の展開においても常にリーダーシップを発揮して、方向性を指示しなければなりません。

また上級者は、自分のパフォーマンス中にわざとスペースをつくって、まわりの共演者に仕事させることもできます。演奏しながら、周りの楽器も指揮して、自分のパフォーマンスの一部とすることすらできるのが上級者というものです。

以上のことは、あくまで理想であって、初心者、中級者には難しいとは思います。
ですが、最前線に立って目立てる分、それなりの覚悟が必要なのです。
そして例え現時点では無理だとしても「こうあるべきだ」と思い続けて努力することで、だんだんと理想の自分に近づいていくはずです。

まず、演奏するときに目の前に譜面を広げない!
そうできる曲を1曲1曲増やしていきましょう。