セロはアリアに真実を話し始めた。
「俺は、あなたの祖父と叔父の仇かもしれない。」
と、セロは言った。
一瞬、アリアの瞳に暗い影がよぎった。
予想はしていたのかもしれないが、ショックを受けているようだ。
それからセロは、自分はずっと傭兵をやってきたこと、その中で多くの人を殺してきたことを話した。
そしてあの砦の夜襲、父の仇を取ろうとした少年のことも・・・。
金の首飾りは、少年が持っていた物だということを伝えた。
セロは、首飾りを盗むつもりは無かった。
ただ少年を殺してしまった事に、酷く動揺していた。
少年が亡くなった場所は森の中だったため、このままでは発見されない可能性があった。
このまま朽ち果てるより、せめてきちんと埋葬してもらえるよう、発見されやす場所に移したのだ。
その時に少年のポケットから、首飾りが落ちた。
それを拾ったセロは、誰に渡すことも出来ず、今まで持っていたのだ。
そして少年は、最後の言葉、
「父さん・・・・、ごめん・・・。」
と言い残し、この世を去ったことを伝えた。
きっと父親の仇を取れず無念だったのだろうと、セロはアリアに言った。
しばらく無言で聞いていたアリアは、
「それは、少し違うかもしれません。」
と言った。
アリアは、祖母から聞いたことを話した。
アリアの叔父、つまりその少年の名はクリストというらしい。
クリストは父親から、隠密と弓を教わっていた。
隠密は敵から隠れるため、弓は自分の身を守るためだ。
父親は兵士だったから、危険な職業だ。
いつ命の危険にさらされるか解らない。
その危うさが解っていたため、息子には危険を避け、長生きしてもらいたいと思っていたようだ。
だからこそ砦に近づくなと、いつも息子に言い聞かせていた。
それでも、15歳ぐらいの子供が親のいう事を聞かないのは、よくあることだ。
あの日も、母親のソーヤが知らない間に出掛けてしまったらしい。
そして、帰らぬ人となった・・・・。
「クリストが言いたかったのは、父の言いつけを守らず、ごめんなさい。
無理に敵討ちなんてしようとして、ごめんなさい。
そういう謝罪の意味だったんではないでしょうか。」
と、アリアはセロに言った。
「祖父は兵士の仕事を全うしたんです。
敵討ちなんて望んでなかったと思います。」
と、アリアは付け加えた。
その言葉を聞き、セロは少しだけ肩の荷が下りた気がした。
少年のクリストを殺し、自分がまだ生きていることへの、後ろめたさがあったのかもしれない。
しかし、だからといって、自分がやったことが消えるわけではない。
「父親は解らないが、クリストを手にかけたのは自分だ。
あなたの気が済むようにしてくれていい。」
と、セロは言った。
つづく