箱の中には『希望・エルピス』だけが取り残された
パン(すべて)ドラ(贈りもの)
は、人間を苦難に向かわせる存在として送り込まれ。
人間を懲らしめるために送り込まれ、数々の厄災を世に放つ
パンドラはゼウスの命令によってつくられた、人間の初の女性。ヘパイストスが泥と水をこね、アフロディテが男を惑(まど)わせる魅力を、ヘルメスが嘘や狡猾(こうかつ)さなどを与えました。
人間界に送り込まれたパンドラは、ゼウスからけっして開けてはならないと言われた甕(かめ)の中をこっそりのぞいてみることに。
甕のふたをずらすと、なかからたくさんのものが恐ろしい勢いで飛び出していきます。あわててふたをしたものの、ときすでに遅く、中に残ったのはひとつだけでした。
パンドラは、その箱(甕かめ)を開けてしまいます。すると箱の中からは、考えうるすべての災い(犯罪・病気・不幸など)が飛び出し、以後人間はこれらの災いとともに生きていくこととなりました。
世界中に飛び散ったものは、疫病や犯罪、悲嘆や疑念といった厄災(やくさい)たち。以後、人間は怯え心配しながら暮らすこととなりました。
一方、甕の中に残った
ひとつは
希望(エルピス)でした。困難や絶望に打ちひしがれるときでも、未来に希望を持つことだけは許されたというわけです。
*エルピス:パンドラが開けた甕に残っていたもの。古代ギリシャ語であり、希望、予兆、期待などと訳される。
「エルピス(Elpis)」とは、「古代ギリシャ神話で、中からさまざまな厄災が飛び出したと伝えられる『パンドラの箱(壺)』に唯一残されていたものとされ、良きことの予測として『希望』、悪(あ)しきことや災いの予測として『予兆・予見』とも訳される言葉」