いつか、同じようなことで悩む、どこかの誰かの助けになることを願って。
日本人女性Aさんは台湾の職場で同僚だった台湾人男性Bと結婚。
出産を機に退職し、専業主婦になる。
結婚9年目に永久居留証を取得するが、その後夫の子どもに対する精神的DVを訴え、裁判所に保護命令を申立てるとともに離婚訴訟を提起。
離婚調停が成立し、子どもの親権はAさんが取得。子どもの生活環境をできるだけ変えないようにとの配慮から、前夫が家を出て、Aさんと子どもは前夫名義の家で引き続き暮らすことに。
その子どもが中学に進学するときのこと。
台湾には住民票のようなものがないので、学区、選挙区などは本籍地が基準になって定められる。
Aさんたちが暮らすところは、少子化の深刻な台湾でも例外的に出生率の高い地域だったため、多くの公立小中学校で入学者数制限のための審査が行われていた。
学区内に住んでいるからと言ってその学校に入れるとは限らず、持ち家か賃貸か、何年住んでいるか、低所得世帯かなどによって優先順位が決まっている。
持ち家の場合はそこを本籍地にできるが、賃貸の場合は大家が同意するとは限らない(法律上は同意は必要ないらしいが、現実にはいろいろある)。
それはともかくとして。
Aさんたちの場合、離婚したとは言え、子どもの本籍地かつ実際の居住地は父親の持ち家であったため、小学校に入るときも特に審査に問題はなかった。
Aさんは入学審査に必要な書類が書かれた学校側からの通知に従い、家が父親の所有であることを証明する書類と、役所で取ってきた子どもの戸籍謄本(台湾では一部だけでも謄本と呼ぶ)を携えて、指定された日に中学へ手続に出かけた。
ところが、思いがけないことに、書類に不備があるため手続きできないと言われてしまう。
家はお父さんの所有になっていますが、戸籍謄本にお父さんの資料がないため、関係性の確認が取れません、本人(子ども)と両親のどちらかの本籍が同じ住所にないと、入学の条件にあてはまらないので、それがわかる戸籍謄本か、あるいは戸籍名簿(台湾では各世帯に全員の戸籍情報を記した「戶口名簿」という名簿がある)」を出してください、と言うのである。
そこでAさんは、自分は外国人だからそもそも戸籍がない、戸籍がないので戸籍名簿も持っていない、そして子どもの父親とは離婚しているので、子どもの戸籍謄本しか申請できない、でも法的な単独親権者である自分の永久居留証に記されている住所と、子どもの謄本にある住所は一致している、と永久居留証を提示。
しかしながら、結局それでもダメだと言われ、お父さんに戸籍名簿を持ってきてもらってください、と言われて、手続未完了のまま引き返してくるしかなかった。
その帰り道、Aさんは悔しくて泣いた。
どうして近所の公立校に入学するだけのことが、こんなにも面倒なのか。
どうして苦労して単独親権を取ったのに、自分一人では子どもの入学手続すらできず、離婚した前夫に戸籍の資料を出してもらわないといけないのか。
もし台湾人である前夫が親権を取っていたら、こんなことは起こらなかった。
外国人だから、戸籍がないから、こんな簡単なことすら子どものために単独で手続してやれない。
なんて不条理なのか…と。
台湾の公立小中学校がすべてこういう状況なのではない。
だが一部の人口過密地域や、人気のある学校の学区内では、居住の実態がないのに籍だけその学区内に置いて、子どもをそこの学校に通わせようとする親がいるらしい。
そのため、入学にあたってはとても厳しい条件が設けられ、書類審査に加えて、実態を把握するための家庭訪問までする場合もあるらしい。
AさんはDVが原因で離婚し、外国でシングルマザーになった。
日本の家族や友人には「日本に帰ってくれば?」と言われるが、子どもは台湾で生活することを望んでいる。
台湾の知人からは「台湾の国籍取らないの?」と言われるが、日本は二重国籍を認めていない。
日本国籍を放棄してまで台湾の国籍を取りたいとは思えない。
だから永久居留証を取ったのだが、永久居留証を取ることの大きな利点や意味を実感したことは、今のところ一度もないという。
以前このブログでも書いたことがあるが、しいて言うならば、離婚したとき、子どもの親権を取れなくても永久居留証があれば引き続き台湾で暮らせるということくらいか?
外国人が離婚後に親権者となって引き続き滞在するなんてケースは多くはないかもしれない。
でもゼロではないのである。
何かあるたびに、外国人で戸籍がないから手続ができない、台湾人の元配偶者を呼んでくれ、といちいち言われるのだろうか?
何とも気が重くなる話である。
何とかならないものか。