夢一夜 肆拾肆
2016/11/14 望月 urtra super moon
11::30pmごろに見た夢
恐らくよくは知らぬ飲食店の
厨房であったのだろうと思う。
午時近くか、やや過ぎていたか。
薄曇りの空から差す日が蛍光灯の灯りと入り混じり、
床と壁のむき出しのコンクリートと
半世紀も前の大衆食堂にありそうな家具に、
当たっていた。
狭からぬ部屋だった。
少なからぬ人が静かに、
行き交いつつ急ぎつつ仕事をしていた。
その隅に置かれた青いバケツを、
自分は見た。
ありふれた、やや大きめのバケツで、
新品同様と言うにはいささか古びていたが、
汚れもなく傷も少なく清潔なものだった。
8分目ほど張られた水は澄み、
そのためか見ただけで冷たさを感じた。
バケツの底に猫の姿かあった。
ダイリュートの強い赤虎の、
華奢な仔猫だった。
いかにも仔猫がするような姿に
香箱を組み、
こちらを少し振り返った体であった。
わたしは誰かと言葉を交わしたり
やや離れたところを行き交う忙しげな人の流れを
見やったりした。
そうすることで目の前の猫から気をそらしているのだった。
猫の被毛は水の中にあって柔らかく立ち上がっているように見えた。
それは、
日向で香箱を組む猫の毛が
微風に揺れる様とは
似て異なり、
むしろその佇まいは水中花のようだった。
猫が自分を見たかのように感じた。
となると、
猫は生きているのだろうか。
生きているならば急がねば。
自分は漸く意を決し、
バケツに右腕を差し入れた。
触れた瞬間、
猫が既に死んでいると知れた。
自分は手を引き、
息を飲み、
泣き喚きそうになったところで
目が覚めた。
追記:
夢の映像は薄明るい光が満ち、
静かに整然と時が流れていた。
けれど、目覚めて思い出すほどに
元気が失われるような夢だった。
恐らく実際に起きたこと、したことが、
最近見た猫や建物などの印象に混じって
夢に現れたものだろう。
それ以上でも以下でもない。