尾 (夢一夜 拾玖) | feelsayo 2 

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猫を眺め 猫を被る日々。  
内心 ・・・ です。

晴れていいた。

というより、空気の乾いた薄曇りだったのかもしれない。

日差しは明るく、しかし眩しいという程ではなかった。


照り返しもまた

眩しくないでもなく、眩しいでもなく、

ただ、

アスファルトと街路の欅を薄く白茶けた色にしていた。



自分は家の方へ、横断歩道を半ば近くまで渡ったところで立っていた。


雉虎猫が坂道を降り、横断歩道を渡って走ってきた。



雉虎猫は自分に駆け寄り、擦り寄りして、走って行った。


そんなようなことが何度かあった。

時分はそのたび、雉虎猫が車に轢かれやしないかと肝を冷やすのだった。


雉虎猫はそんなことは夢にも思わぬ様子で、

軽やかに憂いもなく走って行くのだが

どこに行くのかはわからなかった。



多分、二回目か、そうでなければ三回目くらいのことだったろう。


雉虎猫が擦り寄った時、鉤尻尾の先が落ちた。

雉虎猫はそれも気にかけぬ様子で、擦り寄り甘えた後走り去った。


自分はその場に残され、落ちた尾を拾い上げた。

尾は細く、骨に似た組織が真ん中に通っていた。

その組織は細く、黒ずんで、一般に言う骨や骨髄とは違うように思われた。



尾は切れたばかりの蜥蜴のそれのように、

自分の手の中で踊った。

尾は、仄かに温かかった。


自分は困惑の度を深めながら、尾を手提げにしまった。


(自分が提げていたのは、

猫戯ラシが子供の頃使っていた、小ぶりの手提げだった。

焦げ茶色の布製で、ハンドルとワンポイントの猫のシルエットだけが

合成皮革なのだった)



尾は、手提げの中で、穏やかに、機嫌良さそうにした。



自分は相変わらず、雉虎猫が横断歩道を走っり、

擦り寄り、走り去るたびに肝を冷やしているのだった。





…というところで目が覚めた。

(2010年10月1日 余り遅くない時間)