電車の中で不愉快な思いをして帰宅した。
郵便屋らしい女のひとが玄関で、
「オダジロウおだじろうさんいらっしゃいますか」と呼ばわっている。
そのひとはうちの人ではありません、と言いに、勝手口から玄関に回った。
女の人はもういなかった。
空はどんよりと曇り、やや薄暗かった。
風はなく、通りは静かだった。
通りには雉虎猫によくにた雉虎柄の猫が、こちらに背を向けて寝そべっていた。
ふと、眼を三叉路の方に遣ると、
斜向かいの一軒飛んで隣の家の庭木の側に
大きな美しい虎が立って、こちらをみていた。
目を移すと、隣家前あたりに、
見事な濃い色の虎がいて、こちらをみていた。
自分がもしデジカメを向けたら、虎が近づいてきて家に入ってくるように思われた。
自分は虎の注意を引かぬよう、静かに扉を開けて台所に入った。
三和土に猫寄セ(こと家人1)がしゃがみ、
三和土の手前に猫戯ラシ(こと家人2)がしゃがみ、
二人して雉虎猫に屈みこんでいた。
何か異常の感じがあった。
雉虎猫はしっかりとした軽やかな足取りで、
台所のドアの前まで行った。
雉虎猫の左目が真っ赤になって、眼窩から零れ落ちそうになっていた。
自分はとっさに、
雉虎猫は虎にやられた、と、思った。
雉虎猫は元気に廊下を走って行った。
雉虎猫の眼窩から零れ落ちた、充血し打眼球が床に転がった。
白目の部分が割れた茶碗のような、陶器の欠片のような形をしていた。
猫寄セと猫戯ラシが雉虎猫の後を追った。
自分は、かかりつけの獣医か救急対応の獣医に電話して
すぐ雉虎猫の目を治さなければ、と思った。
と、いうところで目が覚めた。
(2010/07/20 11:54)
翌朝、
(2010/07/21 03:22am)
雉虎猫は居間の沓脱石に上がり、鳴いた。
掃き出し窓が開くと、雉虎猫は居間に飛び込み、
簡単に自分に擦り寄った。
そして丁寧に毛繕いをした。
雉虎猫の体に怪我はなかった。