玄関を開けると、部屋との仕切りに壁はなく、三和土からあがるとすぐに畳の部屋があり、その真ん中に顔まで毛布を掛けられたご遺体が寝かされていました。

家中の窓は閉め切られ、冷房もなく、腐臭で澱んだ空気と暑さで、めまいがするほどでした。あまり長時間の滞在は耐えられそうになかったので、手早く状況の確認だけ済ませることにしました。

ご遺体に掛けられた毛布を一気に引きはがすと、滝沢さんのうわっという声が後ろから聞こえました。

通常、検死の際は、着ていた衣服は、すべて脱がされ、全裸にされます。

ご遺体の損傷はかなりひどく、ドロドロに溶けた肉が骨に絡みついた感じで、顔もほぼミイラ化しており、生前の顔を知る人がみてもおそらく見分けがつかないのではないでしょうか。

「これ喪主か? お前が担当した喪主か?」

滝沢さんはこういう特殊な現場にくるとパニックを起こすらしく、妙なハイテンションになり、ご遺体を指差し、僕に何度も同じことを繰り返します。

「そうかもしれんけど、この状態ではわからんわ。臭いがたまらんから一回外に出よ」

これ喪主か? となおも言い募る滝沢さんの手を引き、一旦表に出ることにしました。


以下、続きます。