無花果は、子供の頃からいちばん好きな果物。
無花果の皮から染み出る白い液を塗ればイボが取れるとお母さんに聞いて、
私はイマイくんの手の甲にあるイボにそれを塗ってあげた。
小学3年生の私は前の席に座る優しいイマイくんを気に入ってはいたんだけど、
イマイくんの手の甲にあった直径5ミリのイボが気になって・・
そこまで好きにはなりきれなかったんだ。
イマイくんは私の話しかけるとき、座ったまま振り向いて私の机に片手を置く。
その甲にあるイボが気になって仕方がない。
かわいい顔より、長い足より、その優しさや声より、とにかくイボが気になって仕方ない。
イマイくんにイボがなければどんなにいいだろう。。
そんな期待を込めてイマイくんのイボに無花果の白い果汁を塗り込み、
イマイくんはそんな私の不純な動機を知ってか知らずか、
これまた期待を込めてその様子を見ていた。
が。そんな私たちの幼い願いは儚くも砕け散り。。
イボは前よりも勢いと艶を増して、イマイくんの手の甲に君臨し続けた。
そんな?ある日、イマイくんが私に手を差し出すと・・
その甲ではあのイボが真っ黒に変身!
マジックで塗ったんだって。。ふーん。。。ってキモチワルイわ!
その日を境に私はもうイマイくんがどうでもよくなってしまい、
その恋は始まりもしないのにどす黒い最後を迎えた。
今思うと。
私はもしかしたら、イマイくんじゃなくてイマイくんのイボが好きだったのかもしれない。
イマイくんと無花果を利用して、あのイボに触れてみたかっただけなのかもしれない。
あの日の黒いイボは、幕引きの黒い緞帳だったんだ・・きっと。
後付けだけど。後付けもいいとこで、たった今付けたんだけど。
今もイマイくんの手の甲にはイボが存在しているんだろうか?
そのイボごと愛してくれる、優しい女性が側にいるといいね。
それとも今でも誰かに訳のわからん液を塗られたり、黒く塗ったりしてるんだろうか?
それはそれで素敵なネバーエンディングストーリー。
ファルコンの代わりに無花果が空を駆ける。白い液を滴らせて。
ただどうしても思い出せないのが、あの子の名前。。ほんとにイマイくんだっけ?
イボの形状はこんなにもリアルに覚えているのに、名前に確信が持てない。。
ということは、やっぱりあのイボだけが私のリビドーだったの?
。。いまさら!死ぬほどどうでもいいぜ!
私が無花果を食べながらこんな事を考えてるなんて誰も知らないけど、
実は私はいつもイマイくん(仮名)とその手の甲にあったイボを想いながら無花果を食べている。
おいし。
