身体の感覚に注意がむくのは、たいてい、痛みやかゆみ、暑さ寒さなど、不快な感覚が生じたときです。
多くは、その身体の感覚を無視するか、または、変えようとするのではないでしょうか。
たとえば、肩がこっていて「肩の痛み」があるとき・・・。
Aさんは、それでも明日の締め切りに間に合わせようと仕事を続けました。
このとき、Aさんはこの「肩の痛み」を無視したわけです。
Bさんは、肩をぐるぐる回したり、ストレッチをしたり、もんだりしました。
Bさんは「肩の痛み」を変えよう(なくそう)としたのです。
ソマティック・エクスペリエンスのセッションを受けると、セラピストから身体の感覚に注意を向けるよう誘われます。
そのやり方は、上の2つの例のどちらとも違います。
セラピストが誘っているのは、次のような体験です。
・「ああ、肩に痛みがある」と気がついている(無視しない)。
・感じている感覚を変えようとしない。
・身体に注意を向け続ける(他のことを考えたり、ぼんやりしたりしない)。
自分の身体で感じていることだけれども、
そして時にそれが少し不快な感覚であっても、
ちょっと人ごとのように、好奇心をもって観察する態度です。
これをしてみると、次のようなことに気がつくと思います。
・注意を向けると、その感覚はよりハッキリと感じられるようになる。
・注意を向け続けていると、感覚の質や感じている場所が自然に移り変わる。
実際のセッションでのこの体験は、たとえばこんな感じになります。
あ、左と右の肩で痛さが違うみたい……(しばらく両肩の感覚を味わってみて)……左の方はするどい痛み、右はにぶい痛みって感じだな……(またしばらくそれを感じてみて)……さっきよりなんだか感じが変わってきた……(どんなふうに変わってきたのか感じてみて)……そうか、ちょっと痛みが弱くなったんだ……(弱くなっていることを味わいながら)……おもしろいな、もう少し待つと次はどうなるのかな?……
いかがでしょう。
自分の身体の感覚とのこのような向き合い方、ふだんはめったにしないけれど、面白いと思いませんか?
(つづく)