ストレイトティー -6ページ目

ストレイトティー

萌え語りが多め。たまに腐が出現なので注意を

「や」
振り向けばアイツがいた。
「久しぶりやんな、あんたが若い頃に一度会ったきりちゃうか?」
アイツは昔、私が若い頃初めてあった時のようにへらっと能天気な笑みを浮かべていた。
だが笑っているにしてもアイツは笑えないほどの生々しい傷を負っていた。片方の目には眼帯を、頭や腕は包帯に巻かれてその白い包帯に血が滲んでいるのが見えた。足を一本やられたのか、杖をついて立っている。昔からコイツは服装には無頓着でぼろっちい服をよく着ていたが、今日のはどうみても血のしみが洗濯では落ちていなく黒い焦げ跡もはっきりとわかる。

私は動かしていた手を休めた。アイツに座るようすすめたが、アイツはどうせすぐ帰るから大丈夫だといって断った。

「またごっつい絵を描いてはるなあ」
この絵、何かわかるか?
「勿論や」
そうか
そうだろうな

私は絵の具で汚れた手をじっと見つめた。
アイツは私と絵をじっと見ていた。アイツは血の匂いが染み付いた手で自分の頭をガシガシと掻いた。私はコイツになんと話かければよいのか戸惑った。祖国のこと戦争のことこれからのことこれまでのこと――その傷のことをコイツに聞くのは不粋な気がした。アイツは私の考えを読み取ったのか、少し近づきゆっくり、丁寧に、はっきりとこう言った。
「心配せんでええよ」
私はそのときどんな顔をしていたのだろうか。

アイツは絵に真正面に向かい淡々と続けた。私はコイツの背中を眺めながら返事をした。アイツの表情はわからなかった。
「この絵は〈この傷〉そのものやな」
ああ、そうだ
「あんたの気持ちが真っ直ぐ伝わってくんで」
そうか
「怒り、悲しみ、憎しみ、………うーん」
どうした
「いやな、なんとなくな」
ああ
「ただ純粋にな」
ああ
「あんたのこと尊敬してんねんよ」
…………ああ

私はこの背中に絵のことを話続けた。この絵のこれまでのこと、そしてこれからのことをだ。

どうか、国が、――になるまで、この絵を、国に送らないで、くれ。
「わかったで、あんたの願いは必ずな」

私はどうしようもなく不安な気持ちが湧き出てしまった。コイツの傷そのものが癒されるのを、国が癒えるのを、信じることができるのだろうか、と。

アイツは振り返っていつにもなく変な表情をしていた。

「大丈夫やで、この絵は必ず国に」
確証があるようだな。

アイツは私の言葉に軽く吹き出して、

「もちろん!なぜなら俺はエスパーニャやからな」