小説日記 -4ページ目

小説日記

男女二人が、リレー小説を、書いていきます。
(現在、作者ビョーキのため休載中につき、エッセイと差し替えております。)

 朝ごはんはパンと味噌汁、いちばん苦手な組み合わせだ。溶けかけのワカメと崩れつつあるジャガイモを一息に流し込み、玉ねぎと残りの味噌汁をずるずるとすする。お碗の底に煮干しと大豆の滓、玉ねぎが透明な糸を引いてる、流し込む。マグカップに入ったお茶で口の中をリセットしてから、6枚切りの食パンにたっぷりマーガリンを塗って、もしゃもしゃ食べ始める。向かいには妹が座ってる。おいしそうに味噌汁を飲んでる。
 お母さんは4月から仕事に行き出してるから、ぼくと妹が朝ごはんを食べ始めるのを見届けて家を出る。今日からは朝の食器洗いはぼくの仕事だ。このお手伝いと、毎週月曜日の夕方に妹をプールまで送ること、四年生になって変わったことはそれぐらい。
 水を出しっ放しにして食器を洗ってトレーにきれいに並べて乾かして、先に靴を履いて待ってる妹と一緒に玄関を出る。まだ初日だし、今日は余裕をもって家を出られた。いつもは一人でこの階段を四階から下まで一気に駆け下りる。集団登校のほかの人達はもうみんな揃っていた。出発の7時50分に間に合わずに一人で後から追いかけるときは、朝からミジメな気持ちを味わうけど、「近道」を通って行けるからひそかに嫌いじゃないと思ってる。今日は通らない小道を尻目に、集団登校の列のいちばん後ろをぼくはのろのろとついて歩いた。


 三年から四年に上がるときはクラス替えがない。先生も同じだ。教室と下駄箱の場所だけ変わる。それなりにわくわくして新しい場所を確認して教室に入り、まだ落書きのない白い机についてみる。ロッカーにもまだプリントや教科書が何も入ってなくて、クラスの周りの顔は一緒だけど、新しい学校生活が始まる感じがしてうれしい。ぼくは整理整頓があんまり得意な方じゃないらしい。通知表「あゆみ」の生活欄にいつも「もう少しがんばりましょう」みたいな事を書かれてる。教科の欄はほとんど「よくできる」なのに、生活欄は「できる」ばっかりで、ぼくはいつもその「できてない」ところをお母さんや先生に言われてる。でもいまはきれいな机とロッカーだ。机に落書きはすると思うけど、引き出しやロッカーの中は、今日からは整然とした状態を保たん、と決意する。そんなそわそわする気持ちを隠すようにして、これから一年つき合うその新しい机のベージュの天板に顔をうずめてみた。

 先生が来て、朝の会をして、それから始業式をしにみんなでぞろぞろと体育館に向かった。古い校舎と違って、ぼく達が入学するすぐ前に新しく建てられた体育館は、入るとエントランスの部分だけ、ペンキかシンナーみたいな変な薬品っぽい匂いがする。その匂いをくぐって板張りの館内に着くと、四年生の場所にクラス毎に背の順で男女別れて並んで座った。ぼくは前から3番目だけど、もうすぐ身体測定があって4番か5番ぐらいになるような予感もする。まあ1番前か2番とかじゃなければ喋ってても先生から見えない(と思っている)からいいや、とも思うけど。朝の体育館には大きな天窓から光りが差し込んで、空中できらきらしてる。

 みんなで校歌を歌ったり校長先生の話を聞いたり、いつもの始業式が進んで、4月からこの小学校に来た新しい先生の紹介があって、最後に転校生が壇上に上がった。それまで近くの友達と喋ったりぼんやりしてたぼくも、このときだけは耳をそばだてて前に注目した。どうせうちのクラスには誰も来ないんだろうなあ、って半分思いながらだけど。