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アニメと写真のおはなし



書きかけだったハムレットの感想を書ききりました。で、もちろんこのままレポートで提出するつもりだったりします(笑)

□子どものためのシェイクスピア『ハムレット』

 宮澤賢治の勤めた学校に出てきそうな、青山「書斎館」においてあるようなアンティークさの漂う木造の机と椅子。それは子どもたちにとって馴染みのある、それこそ学校の机のようなセット。それが椅子と机と言う正規の役割から王座の台と階段になったりかなり多様に使われる。

 開始は暗闇からフェードインしてくる拍をとる音。徐々にはっきりと、徐々に複雑なリズムを叩き始める。少しずつ闇の中で耳と眼を澄ますと、黒い服に黒い帽子を纏った、『モモ』の灰色の男達のような風貌の人物が8人はいることがわかる。そして、そこからポジションが変り、1列になったあと、不思議な雰囲気を漂わせながら言葉を呟く。かれら黒い人物は、前回観た野田秀樹の『半神』の「白い怪物たち」と同じような役割であり、彼等は死者の国の住民、あるいは死者である。そして主人公の心でもある。舞台上で刻々と役割が変わる。でもそれは退場する必要もなければ特別な合図もいらない。それは衣装が黒い(あるいは白い)という無地・無個性のまっさらな状態で漂っている空気のようなものだからだろう。

 また、父親の亡霊として登場する際に、ハムレットは「いや、あれは悪魔かもしれない。悪魔は人が見たいと望む姿となって現れる」といっている。やってはいけないことには甘美な香りがする。食虫植物が餌を寄せるために放つのも甘い香りである。少女漫画系列上「耽美系」に分類される漫画家、珠黎こうゆの『ALICHINO』のタイトルになっているアリキーノとは「誘うもの」という意味なのだが、彼らは妖魔といった存在で、彼らはもともとの姿から人化するときに、美しい皮をかぶって現れる。単に美麗な姿のときもあれば、「獲物」の望む姿、失った恋人や両親などの姿で現れることもある。視覚が発達していると、匂いの他に姿形が重要となる。「小悪魔」な女性というのが可愛い顔をしている計算高い(とは限らないが)女性をあらわすのも、そんなところからきているのだろう。

 ハムレットが繰り返す台詞、死、あるいは永遠の眠りについての言葉が印象的だ。ここ最近流行的なもので傾向が強くなっている、思春期の時代に特に少女たちにありがちな「自殺願望」に関連して考えられる。なんとなく分かるのが、「死にたいけれども実際にどうなるかわからない怖さ」というものである。自殺願望がある少女たちというのは逆に「生きたい」という願望の強い少女たちであると考えられる。生き辛い、だから死にたい、けれども全く分からない世界に飛び込んでいく勇気がない。というところで踏み留まることを繰り返す。現在週間少年ジャンプで連載中の『DEATHNOTE』の第一巻で、主人公月が始めて人を殺した後、世の中の悪を裁こうと考えた時、月は自分に自問する。「(人の命を奪うという重みに)耐えられるか?」悪といえど人を殺すことはかなり精神的負荷がかかる。命というものはリセットがきかない。生と死は一度限りの経験しか許されない。死は自分の意識の届かない場所にある。死者は口はきけない。よって他者の死を見てもそれは、機能が停止した状態を見ているだけであって、その死んだ本人の意識の行方などはどのような努力をしても知ることは不可能である。死を恐れる人間はその「何も分からない」という部分が怖いという人も多いのではないだろうか。しかし、死というものを避けることはできないため、恐れるよりは受け入れようと試みるのが宗教の世界であり、生き辛さから救うのも宗教であったりする。

 舞台の途中、前半と後半の引継ぎの部分で、昼食を食べるシーンがはさまれる。彼らは墓をつくっているらしいのだが、ハムレットの話をしている。後半での展開をすこし匂わせて、観客の期待を煽るのである。

 前回鑑賞した『半神』、そして今回の『ハムレット』、どちらも最終的に冒頭部分の反復で終わるひとつの楽曲のような形式をとっている。会話の途中途中に同じようなフレーズを入れるのはカノンの形式と同じである。「半神」は完全に同じではなかったが、「ハムレット」の場合、冒頭部分に戻ったことで、この物語が回想から始められていることがわかる。冒頭部分で物語の核、結果を連想できるようなキーワードを落としておく始め方はかなり印象に残る。ネタバレの度合いに気をつけなければならないが、冒頭で宣言することで物語の軸を設定できるのは良い効果かもしれない。

 個人的な感想をいえば、ハムレットのフェンシングの構えは絶対に間違っていると思う。意図的なものなのだろうか。なんかフェンシングといより日本刀で戦ってる感じがした。


河合 祥一郎
謎解き『ハムレット』―名作のあかし
ウィリアム シェイクスピア, William Shakespeare, 河合 祥一郎
新訳 ハムレット
大場 つぐみ, 小畑 健
DEATH NOTE (1)

珠黎 こうゆ

ALICHINO(アリキーノ) 1 (1)

□どの国でどんなスポーツがなされているか、を知るのに、児童文学や漫画が役に立ったことはありませんか?イギリスの女子のスポーツ「ラクロス」を紹介しているのはエニド・ブライトンの「おちゃめなふたご」シリーズ。全巻持っているすっごく好きな本です。ふたごの通うクレア学院ではラクロスがとても盛んです。ラクロスに限らずスポーツ好きな女の子がたくさんいます。対して、フランスから来たクロディーヌやフランス語の先生マドモアゼルは洋裁などが好きな人種としてかかれています。現代となっては一概に言えないと思いますが昔はそういうイメージだったのでしょうね。

ブライトン, 佐伯 紀美子
おちゃめなふたご



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