医療の現場を離れて
教育に携わる仕事に就いて早4年目
臨床現場では老若男女問わず、色んな人と接して様々な世界を見た。
今は夢を追いかける若者達と毎日を過ごしている。
学生一人一人と向き合い、個人的な相談を受けたり面談をする中で
自分自身の育ちや、これまでの環境と向き合うことも多くなってきた。
自然に幼少期のことをたくさん思い出す。
私は両親からの絶対的な愛情の元で育った自信はあるけど
それだけで「育ちが良い」とは言いきれない。
うちの家族はみんな気性が荒く、学歴もない。
怒られる=叩かれる、蹴られる が当たり前だったし、イチイチ口が悪い。
俗に言う「ガラの悪い家族」だった。
警察なんかよりよっぽど親が怖かったし、我慢も沢山した。
でもそれは愛情の裏返しであることを、
なぜか当時から理解していた。
キレるとどうしようもない父親だったけど
地震が起きたら命を張って家族を守ってくれたし、
誕生日には手作りで部屋を飾り付けしてくれたし、
30を過ぎても「とーちゃん」と呼べるのは
父親の心底から溢れ出る子煩悩さを感じているからである。
はるか昔、私がまだ保育園児だったころは
よくある「親の変な嘘」に騙されていた。
スイカの種を食べるとお腹でスイカが育つ
とかってくらい可愛い嘘ならまだしも
「お前は深井(地元の地名)のハナちゃんというホームレスに育てられてて可哀想やから引き取ったんや。」とか、
昔の戦争の映像がテレビで流れると「今からこの爆弾落とす飛行機がうちの上に来るぞ」
とか、あまりにもトラウマレベルが酷すぎるものばかりだった。
中でも本当に嫌で嫌で
言われる度に泣いていた嘘は
大人になったら女は名前が変わるんや。
お前は「たみこ」、りこ(妹)は「よねこ」や。
これが1番キツかった。
この嘘が勃発した起源はお母さんの旧姓という存在にある。
母方のばーちゃん家に行くと「筒井」ではない表札があり、なぜお母さんには名字が2つあるのか
全く理解ができなくて質問したのが発端である。
その質問を投げかけられた時、瞬時に
タミコヨネコの嘘が頭を過る父親の頭の回転力には感心する程である。
そして私はその話を聞いたとき
なんで私たちだけ運悪く名字ではなく下の名前が変わるのか、
なんで私がたみこで、妹がよねこなのか。
よねこの方がいい!!!!!!!!
と、すごく悲しくなったのを覚えている。
今思うと 私はきっとずるくて
人のものが欲しくなる性格だったに違いない。
その証拠に たみことよねこを比べたところで
よねこの方が良いわけもない。
それに、冷静になると たみこの方が良くないか?
姉はすぐに「妹の方がいい物を与えられている」と錯覚するのだ。
妹が産まれる3歳までは、全てを独り占めできていたことなんて 当時の私に分かるはずもない。
変な嘘は数えきれないくらいあり
夕食の時間には「子供は刺身ばっかり食うてたら体の中に虫湧くぞ」と脅され
「大人になったら刺身いっぱい食べる」と誓った。
お風呂上がりに早くパンツを履かないと
「チ〇チ〇から虫入ってくんぞ」と言われ大急ぎでパンツを履いた。
よく考えろ、私にチ〇チ〇は無いぞ。
その虫はどこからやってくる?何虫だ?
ていうか、とーちゃん虫ネタ好きやな。
子供の思考は本当に単純で
自分にチ〇チ〇が無いことも、そこを目掛けて侵入してくる器用すぎる虫が居ないことも
全然分からなかった。
おしりかじり虫の方が現実的だ。
1番初めに脳に聞こえてきたもののショックで
すべての行動に反映されていた。
あの当時はすごくショックで悲しかったけど、
こないだ親戚でバーベキューをしたときに
いとこの息子に
「焼きそば食べたら身長めちゃくちゃ伸びるで」って嘘をついている自分がいた。
焼きそばを食べると身長が伸びる
ってことが本題なのではなく
「いっぱい食べたら大きくなれるよ」が、変な方向へ行ってしまい
そんな嘘をついたのだ。
私はハッ!とした。
あの親がついていた変な嘘には
実は本当の意味があったのではないかと。
戦争は怖いもの、
私たちに嫁に行って欲しくない気持ちから大人になると変な名前に変わるという嘘をついた、
早くパンツ履かなみっともない、
そして
刺身は俺が食べたいんや、お前ら食うな贅沢か。
はぁ。。。
そういう事だったんだね、
とーちゃんたらふく刺身が食べたかったんだね。
それにしても、
ホームレスのハナちゃんが私を育てていた
という嘘には、本当の意味が見い出せないので
こればかりは本当なのかもしれない。
今日は枕を濡らします。ビールで。