手術翌日のピンチ | 39歳 癌になったママ女医 〜Cancer Gift〜

39歳 癌になったママ女医 〜Cancer Gift〜

消化器内科医 緩和ケア医 2児の母 
39歳で子宮頸癌と診断されました。
それからの経験がどこかで何かの役に立てられればと思い、綴ります。
癌の手術や化学療法などの治療に挑む方。
小さな子どものママで癌を患った方。
医師としての自分、母としての自分に。

手術の翌日 

ようやく眠れない一夜が明けたなあと思っていると

 

あれ?

 

腰から下の皮膚に感覚がない。

自分の手で触っても全く触っていることがわからない。

 

あれ?

 

なんか右足も動かしづらい…!

右足を立てようとしても力が入らない。

さっきまでは動かせていたよね??

 

左足は動かしづらいのは手術で神経を切っているため想定内。

だけど、右足までなぜ…!?

 

 

せっかく手術が成功したのに、下半身麻痺になっちゃう?!

そんな!!

 

 

硬膜外麻酔の副作用のことが頭に浮かんだ。

 

硬膜外麻酔とは背部から脊髄を包む硬膜の外側に細いチューブを挿入し、そこから麻酔薬を投与して痛みをとる方法だ。

 

硬膜外麻酔は術後も数日間、痛み止めとして活用できるため、背中の管から麻酔薬が持続的に入っているのだ。

 

手術前の麻酔科医による説明だと、硬膜外麻酔の副作用で’硬膜外血腫’という非常に稀なものがあると聞いている。

 

硬膜外血腫とは 硬膜外周辺に血の塊ができてしまい、それによって神経が圧迫されることで痛みや痺れや麻痺が起こることだ。確率としては10〜15万分の1だと。

治療には緊急手術が必要な場合もある。

 

10万分の1の稀な合併症といっても、私は安心できない。

なんたって、MRIの造影剤の時に非常に稀な副作用を経験している(11月7日ブログ)ため、もう’稀なこと’は自分にも起こりうることだと認識しているからだ。

 

 

とりあえず、看護師さんに報告。

 

 

「動かなくなってるんです!感覚がないんです!」

 

 

「先生に報告しておきますね〜」

そこからいち早く先生に伝えて欲しいのだが、私が思うような緊急的な対応が行われるかどうかわからない。

 

 

不安で心臓がドキドキ動悸もしてきた。

 

 

担当の先生が朝来てくださるのを待つしかないようだ。

こんな時、時間が経つのがどんなに長いことか。

 

 

待望の先生登場。

 

 

「麻酔の副作用だから心配しなくていいと思いますよ〜」

 

 

え?それだけ?

血腫とかだったらどうするんだ〜!

という疑問は解消されないものの、

先生がおっしゃるのだから、そ、そう信じようか…

と一旦飲み込む。

 

 

それに加えて、看護師さんはしきりに

「後で歩く練習しましょうね〜」

とおっしゃる。

 

 

え、え〜〜〜!

足、感覚ない&動かないのに??

予定では確かに手術翌日から歩行訓練となっている。

 

 

自分の焦りと周囲の調子があまりにズレていて困惑した。

 

 

誰かが来るたびに「足が動かないんです」と訴えていると、

やっぱり先生も気になったのか、

連絡してくださり麻酔科医の先生が来てくれることになった。

 

ほっ。

 

麻酔科医の診察の結果、

「硬膜外血腫ではないと思います

薬が効きすぎて運動神経まで行っているのでしょう。

薬の作用であれば症状は通常一時的なことが多いです。」

という見立てだった。

 

対策として

背中から入っている薬の濃度を薄くする、もしくは

速度を遅くするという方法を試してみようということになった。

 

薬を減らすと痛みが強くなる可能性があるが、麻痺が治った方が安心だと思った。

なぜなら鎮痛薬なら硬膜外麻酔以外にも方法があるからだ。

 

薬の速度を落とすことになった。

 

 

動くようになりますように… 祈る。

 

 

昼すぎ、だんだん足が動くようになってきた。

痺れも範囲が狭まったようだ。

 

 

よかった!!

 

 

それにしても看護師さんはスパルタだ。

やっと足が動かせると思ったら

 

 

「じゃあ、歩いてみましょうか!」

 

 

「や、やってみます…」

 

 

2人の看護師さんに支えられながらベッド脇に立ち

足踏みをする。

恐る恐るではあるが3mほどあるけた。

 

 

歩けるって嬉しい!!