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首もとの汗が、ゆっくりと胸まで落ちてくるのが分かる。

電車を待っている時間、クーラーの風に当たりたくてたまらない。あの風を浴びるために電車を待っているのだと勘違いするくらいだった。

動く雲もそのスピードは遅く、ゆっくりと初夏の風にあおられて涼しげだった。まるで空の布団でぐっすりと寝ているようで、気持ちよさそうに。

それに比べてここはどうだか。暑さ以外に意識が向かないほどのしつこいこの気温は、ため息を出さずにはいられない。

「はぁ・・・。あっちぃ。」

無理もなかった。予報では30度までいくかもしれないとなっていたくらいだ。暑さの覚悟はできていても、体が素直には受け入れてくれない。汗は無限に生産される。

食堂でカレーなど食べるのではなかった。食堂の中の涼しさに甘えた結果、状況が悪化してしまったのだ。どれだけTシャツの中に空気を入れても、もうどうしようもなかった。汗は乾くどころか、という感じで。

これでは夏バテも、時間の問題だった。


「あっつぅ・・・。ダメだこりゃぁ・・・」

バイトの面接の帰り道。人は全くいなかった。まぁこの暑さと日差しでは、外など好んで歩かないだろう。汗が吹き出るだけだ。

日光の熱が、アスファルトから跳ね返る。

駅のホームの中は、日陰でいっぱいだった。それでも涼しいと思えるのは少しだけで、この暑さからは逃げられないと悟った。まぁ、家に帰れば少しは楽になるさ。

俺は、楽園へのドアをくぐった。


自転車のペダルをこぐたび、暑さは容赦なく俺の体を痛めつけてくる。自転車なら風が当たると思ったら大間違いだった。いや、正解ではあるが、当たる風は全て温風だ。これでは全く意味がない。

「はぁ・・・はぁ・・・」

次第に息切れまでしてきた。部活をやめてからもう9ヶ月、半年はゆうに超えている。運動もそれからはほとんどしていないのだ。したと言えば、公園ではしゃいだくらいのものだから。

夏のペダルは、さらに重いものだった。

空は青く、やっぱり雲以外の色は全てが青に染まっている世界。そこに浮く真っ白で大きな雲。見ているだけで、少し自由を感じることができる。雨など想像もできない空を見て、俺はまたペダルをこぎはじめた。


夏は、まだこれからだ。