こういうストーリーはアリだと思うが、
物語序盤の指針と、実際の結末と、文庫版裏表紙煽り文句の齟齬が少々気になった。

「これはすみれの物語であり、僕の物語ではない」と五章冒頭で断っておきながら、
結局中盤から終りにかけてほぼ"僕"の物語になってしまった気がする。

"すみれ"が"スプートニクの恋人"に対して抱いたという強い恋心も、
中盤以降はこの作家の好む「お決まりのストーリー展開」および「存在の虚実・正閏に関する小理屈」に紛れ、
用を為さなくなってしまったように見える。

少なくとも「ラブ・ストーリー」ではない。
むしろ「恋愛を道具のひとつとした存在論ストーリー」でありましょう。
「ラブ・ストーリー」なら、最後まで主に恋愛という要素を通して人間を描くように思われるから。


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5つ星のうち 3.0 まあまあ。, 2010/7/19