作者が水より濃い"血"のくびきを描写しようとしたこと、会話文の中の和歌山弁(?)は良いと感じた。
同じようなことが同じ血筋の人間の間で時を隔てて繰り返される、という構図は良かった。
然し、私には全体的な書き方がかなり苦しく思われてしまった。
どの辺りが苦しいか。
まず、登場人物らが笑い過ぎる。そして笑う以外の感情表現が極めて少ない。
更には笑い方の書き分けも殆どされていない。これが個人的にとてもツラかった。
他にも「ふと~する」という表現が頻出したり、文末の過去形(「~だった」「~した」「~った」)がやたらに連続したりするなど、
語彙の乏しさが節々に見出された。作者の意図はどうあれ、工夫できるものならもう少し工夫して欲しかったと思わされた。
主人公の青年:秋幸が頻りに死んだ兄のことを思い出すのも苦しかった。
死んだ人間に生きた人間が縛られているのを表現しようというのは構わないのだが、
青年が思い出すたびに兄が死んだときの状況をいちいち細かく描写するのは訳が分からなかった。
確かに、血のくびきについてはドストと同じ影が感じられるのかもしれない。
決定的な違いは、ドストが「救済」の拠り所をキリスト教に見出したのに対して、
本書では苦悶と閉塞への「救済」(或いは救いそのものでなくとも救いの役に立ちそうな拠り所)がない点だと思う。
秋幸にとっては土方の労働に集中することがそれに該当するのかと思いきや、結局ならなかった。
同じ土地で同じ血に縛られるのは苦しい。年寄りの同じような昔話はウザったい。ついにヤっちまった。
そこまで書いてお終いなのが本書なのだ。
総じて星は三つとしたい。
テーマは素晴しいのだけれども、同じことが反復して描かれるのが非常に読み苦しく感じられた。
強調したいことがあるなら、伝える形式の手を替え品を替えやって欲しかった。でなくては頁の水増しでしかない。
うーん……。, 2011/2/28
同じようなことが同じ血筋の人間の間で時を隔てて繰り返される、という構図は良かった。
然し、私には全体的な書き方がかなり苦しく思われてしまった。
どの辺りが苦しいか。
まず、登場人物らが笑い過ぎる。そして笑う以外の感情表現が極めて少ない。
更には笑い方の書き分けも殆どされていない。これが個人的にとてもツラかった。
他にも「ふと~する」という表現が頻出したり、文末の過去形(「~だった」「~した」「~った」)がやたらに連続したりするなど、
語彙の乏しさが節々に見出された。作者の意図はどうあれ、工夫できるものならもう少し工夫して欲しかったと思わされた。
主人公の青年:秋幸が頻りに死んだ兄のことを思い出すのも苦しかった。
死んだ人間に生きた人間が縛られているのを表現しようというのは構わないのだが、
青年が思い出すたびに兄が死んだときの状況をいちいち細かく描写するのは訳が分からなかった。
確かに、血のくびきについてはドストと同じ影が感じられるのかもしれない。
決定的な違いは、ドストが「救済」の拠り所をキリスト教に見出したのに対して、
本書では苦悶と閉塞への「救済」(或いは救いそのものでなくとも救いの役に立ちそうな拠り所)がない点だと思う。
秋幸にとっては土方の労働に集中することがそれに該当するのかと思いきや、結局ならなかった。
同じ土地で同じ血に縛られるのは苦しい。年寄りの同じような昔話はウザったい。ついにヤっちまった。
そこまで書いてお終いなのが本書なのだ。
総じて星は三つとしたい。
テーマは素晴しいのだけれども、同じことが反復して描かれるのが非常に読み苦しく感じられた。
強調したいことがあるなら、伝える形式の手を替え品を替えやって欲しかった。でなくては頁の水増しでしかない。
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